フェンスのない屋上だった。
病院に今時そんな屋上あるわけない。この場所は何かがずっとおかしかった。ずっとおかしかったんだ。
ヒュ、と後ろ手が空を裂く。
背後には悠然と虚空が聳え立っている。
振り向けば、もう目の前に迫ったミオが悟ったような顔で俺を静かに見つめていた。
「今日が来るって知ってたよ、私」
「なに…」
「きみは強い人だから。だから期限がちゃんとあって、私を見つけてくれたんだ。すごく、すごく嬉しかった。…ありがとう。でも今度は私の番」
「ミオ、」
どん、と胸に届く衝動。
言いようのない浮遊感。
「 」
真っ逆さまに落ちる最中、最期に見たのはミオの笑った顔だった。