午前1時40分。
草木も眠る丑三つ時、を迎えるほんのちょっと前に俺は布団を蹴飛ばした。
「…ラーメン食いたい」
寝ぼけ眼でむくりと起き上がり、ぼりぼりと腹を掻く。無理もない、ここ六日間ずっと味の薄い病院食しか食ってなかったんだ。盲腸はさておき、食事制限をするような病気療養で入院しているわけじゃないだけに、ここへ来て唐突にその欲が頂点に達してしまって顔を覆う。
────────そしてピン、と閃いた。
☾
一般的に、刑事事件における犯人は犯行現場に二度現れるんだそうだ。
一度目は犯行時。二度目は犯行後。もしくは犯行前の下調べと、犯行時に及ぶ場合もある。
もし俺が空き巣か何かの犯人ならそれはきっと後者だったに違いない。
ミオの病室に向かう道中思ったのは、「角部屋だな」とその程度だった。角部屋で、窓の外にすぐ樹があって。夜にこの樹から見られる木漏れ日ならぬ月の光は、どんなものだろうということと。
一階だから小児病棟に忍び込みさえすれば、途中で外に出て壁伝いに歩けば病室に辿り着けるなと。
───そうすれば土の地面に松葉杖の音は響かないし、人目にもつかないなと。
風が心地よい、夜だった。
角部屋。昼間に中から見た景色。確かに合致していることを外から確認して、コン、と軽く窓をノックする。多分必要なかったっぽいけれど。
少し窓を開けたまま、ベッドに寝そべっていたミオは俺の姿に気づくだにあからさまにギョッとした。