「…言いたい放題。自分は怖気付いてたくせに」

「うんごめん」

「そんな怒った顔で謝られても」

「でも、力になろうかって言ったあの言葉に嘘はない、本当だ。今だって、昨夜のお前のこと見てどーにか出来ねーかなって本気で思った」

「…ほんとかな」

「ほんとだよ」

「嘘くさい」

「おい!」


 ムキになって叫んだら、向かいのミオがぷっ、と噴き出した。俯いて腹を抱えて、糸が切れたみたく声をあげて笑うミオは、しばらく経っても目尻に溜まった涙を指ですくって、まだ肩を揺らしている。

 俺は思わず呆気にとられた。


「…なんだ、笑うと可愛いじゃん」

「へっ?」

「いっつも葬式かってくらいの暗い顔でぶすーっと仏頂面してんだもん。お前、その方が全然いい。もっと笑えばいいのに」

「ぶっ、仏頂面で悪かったな!」

「そこは素直に喜べよ」


 今度はかあっ、と頰を赤らめてムッとするミオにほお、と目を細める。なんだやっぱこいつ結構感情あんじゃん。意外だな。そもそものパーツが整ってるからそんな姿すら可愛らしく思えるし、好印象、とか高みの見物を決めていたのがバレたのかこっち見んな、とどんと胸を拳で押された。痛いけど可愛い。


「まぁいいや。とりあえず誤解は晴れたんだ、時間がないなりに俺ら他にやることあるよな」

「勝算でも?」

「この魔法の本があれば」


 重い本を片手で掲げればニタリと口の端を上げる。


「けど、場所があんまり。みんなに心配はかけたくないし、小児病棟には戻りたくない」

「じゃあもう行き着く先は一つだな」

「?」


 ☾


「うーわ大部屋にひとり。さっみし」

「だろ。だから女連れ込めねーかずっと画策してたんだ」

「帰る」

「マテマテマテ」