「いっ…てぇな!? 何すんだよ!?」
犯人は黒髪短髪の、ルナと顔のよく似た少年だ。歳は5歳…いや、6歳くらいだろうか。意識が飛ぶほどの衝撃に堪らず倒れ込んで悶絶する俺に、細っこい少年は腕組みをしてふんっと鼻を鳴らした。
「はっ、よっわ。なにがヒーローだよ。つーかしょーにびょうとーに入るにはお前、でかすぎ! 大人じゃん!」
「大人じゃねーよれっきとした高校生だわ!」
「こうこうせーってなんだよ!」
「まだ大人じゃない、もう子どもじゃない。───それが俺たち、高校生だ」
「意味わかんねーし!」
ドヤ顔で諭したつもりがただの一つも届かなかった。
げしげし、と何度も同じ箇所を蹴られて蹲っていると、飛び入り参加した第三者が少年の前に立ちはだかった。ミオだ。
「セナ、いい加減にしろ! 弱い者いじめはダメだっていつも言ってるだろ!」
「待って俺弱いの?」
「大人はおっかないんだぞ! “さわらぬかみにたたりなし”って、ミオが言ったんだ! かばい立てするってんならミオだってあいつらといっしょだ、ミオだって、」
ごつん、と音が響いた。
猛犬のように威嚇していた少年が動きを止めたのは、その後だ。静かに動いたミオの拳骨は少年に効果覿面だったらしい。一瞬驚いたように目を丸くしてから頭を軽く撫で、とたんぶわっと瞳から大粒の涙を溢れさせた。
「ミオなんか大っきらいだ!! 死んじゃえ!!」
「せっちゃん!」
多目的スペースを勢いよく飛び出した少年に、隣にいたルナが連動したみたくふぇ、と涙ぐむ。それでも見上げてミオの服の裾を弱々しく握る少女に、振り向いた彼女は切なげに頭を撫でた。
「ミオちゃん…せっちゃんは?」
「ルナの好きにしな」
こく、と頷いてセナの後を追うルナを見送りながらこみ上げるなんとも言えない罪悪感。事態が読み込めないなりにミオに声をかけようとしたそのとき、