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 春の風が、鼻先を掠めた。

 ふわり、と浮かぶ白いカーテンに風を見て、パステル調の世界を愛おしいカーキ色が揺れている。
 私はその髪に、指を通す。ん、と小さく漏れた声が、目を覚ました彼が、私を見て目を見開く。泣きそうだ、と思ったらそれより先に私は泣いていることに気がつく。

 彼の瞳に膨らんだそれもまた、やわらかな笑顔の上にそっと落ちる。

 そしたらきみはきっと、その言葉ではじまりを告げるんだ。


「…おはよう、星村」




















「───…おはよう」