☼ 春の風が、鼻先を掠めた。 ふわり、と浮かぶ白いカーテンに風を見て、パステル調の世界を愛おしいカーキ色が揺れている。 私はその髪に、指を通す。ん、と小さく漏れた声が、目を覚ました彼が、私を見て目を見開く。泣きそうだ、と思ったらそれより先に私は泣いていることに気がつく。 彼の瞳に膨らんだそれもまた、やわらかな笑顔の上にそっと落ちる。 そしたらきみはきっと、その言葉ではじまりを告げるんだ。 「…おはよう、星村」 「───…おはよう」