電車の中ではかっぱえびせんをこぼさないようにして食べる。
 僕は自分のいる空間が汚いのは許せないたちだから、絶対にこぼさない。

 かっぱえびせんをサクサク噛みながら、窓の外の景色を眺める。

 広がる田んぼと畑。茅葺屋根の民家。
 ときたま現れるガソリンスタンドと農協の看板。

 最近この街にできたものなんて何もない。

 学校の社会の時間には地域のことをよく学習するけれど、そのたびに僕はあくびをしてしまう。
 サユミはたまにそんな僕のことをにらむ。

 にらまれると余計にあくびをしたくなって、さっきよりももっと大きな欠伸を見せつける。