ひたすら、海を目指す。

 ほんの少し大人になるための冒険。

 これが小学生として最後の夏休みで、サユミはずっと塾の夏期講習に通っていて、仲のいい友達は二週間も旅行に出かけていて、この夏が終わったら次の夏はもう中学生で、宿題が山のようにあるはずで――。


 そんなことを思うだけで息が詰まる。


 だからこそ、僕には海が必要だった。

 全ての煩悶を受け止めてくれる母なる海が。

 きっとそこには無限の可能性が広がっているはずだ。

 海の向こうは僕がテレビやネットでしか見たことのない外国。