腹の底から、衝動が沸き上がってきて、僕は思わず叫んでいた。
 本能的に、感情的に。

「サユミー! やるからには、合格しろよー! 落ちたら許さねえぞーーー!」

 締め切られたゴンドラの中の叫びは、誰にも聞こえない。どこにも届いていない。ただ天井と、壁と、窓ガラスと、床とに叩きつけられては跳ね返り、跳ね返っては叩きつけられ、消えていった。

 それなのに、眼下に広がる金色の海に吸い込まれて消えたように、僕には思えた。
 もしも海が僕の叫びを吸い込んだのだとしたら、それは僥倖。
 だって、波がきっとどこかへ僕の本心を運んでくれるはずだから。

 海のない僕の町には届かなくても。
 というか、サユミには届かなくていい。
 無限に広がるこの世界のどこかにいるはずの、神様とやらに届きさえすれば。
 こんなこと思っているなんて、サユミには知られたくもない。


 それって、なんか、ガキっぽいじゃないか。

 大人の男はきっと、束縛しない。