そこには無限があった。

 何にも遮られず、何にも縛られない、無限に広がる可能性。
 どこまでも泳いでいける自由と、溺れても迷ってもどこにも掴まることのできない不安。

 僕にも無限の未来が広がっている。
 そしてそれと同様に、サユミにも無限の未来がある。僕にそれを妨げる資格はない。ほんのひとかけらも、ない。

 たとえ僕がサユミにクロールの対決を挑もうとも。

 たとえ赤色のブレスレットをプレゼントしようとも。

 そして……たとえサユミに特別な思いを、1年生のころから持っていたとしても。

 僕にサユミを縛る権利は、全くない。
 僕が自由な人間である以上、サユミも自由な人間なんだ。

 沈む夕日が僕に見せたのは、今まで信じることも理解することもできなかった無限なのだった。