月曜日の巫女






翌日、私は一人、駅前のビルで買い物をしていた。

目的はみんなへのクリスマスプレゼントを買うためだ。

実咲には可愛いタオル、塔子には実用重視で以前気にしていたペンのセットを。

そして問題は加茂君へ何を買うか。

男子にプレゼントを買ったことのない私は、男性物の小物屋さんの前で悩んでいた。





「東雲さん?」


聞き覚えのある声に振り返ると、そこには紙袋を持った葛木先生がいた。


「あれ?先生、本屋に行ってたんですか?」


「えぇ、急に必要な資料がありまして」


そういうとかなりの量の本が入った紙袋を先生は少しだけ持ち上げた。

ここのビルは上の階2つが本屋でここの地域では最大の広さがあった。


「それで東雲さんは何を?」


「えっと、プレゼントを選んでまして」


不思議そうな顔をしている先生に、考えて見れば男性の事は男性に聞くのが一番だと思いついた。


「あの、先生まだ時間ありますか?」


「えぇ」


「男子って何をもらうと嬉しいですか?」


「えっ?」


葛木先生が目を丸くした。


「男子ですか?男性ではなく?」


変な確認の仕方に私は首をかしげた。


「あげるのはクラスメイトなので」


「あ、あぁ、なるほど・・・・・。ちなみに何人にですか?」


「一人ですよ?24日に出かけるのでその時に渡そうかと思って」


「24日ってクリスマスイブですか?!」


「え、そうですね?」


なんだろう陰陽師ってクリスマスって忘れるものなんだろうか。


「・・・・・・もしかして相手は加茂君ですか?」


「はい」


私の返事を聞くと、先生は顎に手を当てて考え込んでしまった。

それにしてもさっきから何なのだろう。


「ちなみにどこに出かけるんですか?」


「場所は内緒にされてるのでわからないです」


「内緒なのについていくんですか?!」


急に接近された迫力ある綺麗な顔と声に、私は思わずのけぞる。

もしかして私の知らないところで何か起きているんだろうか。


「もしかしてまた何か起きているんですか?」


私の途惑った声に、先生がはっとした顔をした。

やっぱり何かあるんだ。


「藤原にまた何かあったんですね?」


「い、いえ、無いです、違います!」


私は慌てて否定する先生をじと目で見上げる。


「その、東雲さんがあまりに簡単に彼についていくのが心配に思えまして」


「加茂君は優しいし良い人ですよ?」


私は思わず言い返す。

確かに最初はあんな事もあったけど、今ではとても優しくて素敵な私のクラスメイトだ。

葛木先生でも友達をあまり良いように言わないのは少しカチンときた。

そんな私の態度に、葛木先生が思い切り途惑っている。


「いえ、彼がというより、女子があまり男子の誘いに簡単に乗るとは危険ではと」


「先生だって誘って私、ついていきましたけど」


「私を一緒にされると切ないですね・・・・・・」


「とりあえず、加茂君はただのクラスメイトで大丈夫ですから!」


私はむっとしてお辞儀をすると、先生が必死に声をかけるのを無視してその場を去った。

単に友達と出かけるだけなのに、ふしだらみたいに言われたのも腹が立つ。

私はカフェに入り頭を冷やした後、加茂君へのプレゼント選びを再開した。