12月に入り、気がつけば今年も残りわずか。
テストも一段落し、後は年末の大イベントであるクリスマスについてクラス内では盛り上がりが起きていた。
既にこのクラスでも彼氏が出来た、彼女が出来たという話題はそれなりに耳にして、既に落選モードの生徒や全く興味のない生徒など、結局の所クリスマスはどう過ごすか、という事についての話題が絶えなかった。
「クリスマスかー」
私のぼんやりとした呟きに、一緒に昼ご飯を食べていた実咲と塔子が顔を見合わせる。
「彼氏が欲しかったの?」
「いや、別に欲しいわけじゃ・・・・・・」
実咲の言葉に私は少し口ごもりながら答える。
私が藤原と過ごすことはありえない。
きっとクリスマスは婚約者と一緒に過ごすんだろなと考えて、ここの所凹んでいた。
「私は面倒だからいらない。
家族と過ごすからそれで十分」
塔子はきっぱりそう言うと、実咲が苦笑いを浮かべた。
「うーん、私は、欲しいけどまだいいかなぁ」
「えっ、誰か好きな人いるの?!」
少し遠い目をした実咲に私は思い切り驚く。
誰か好きな人が居るなんて気がついていなかった。
「あーいや、憧れている人はいるけど、好きというのではないかなぁ。
それとは別に、やっぱり恋人と過ごすクリスマス自体に憧れがあるというか」
恥ずかしそうにする実咲に、なんだかきゅんとする。
実咲は空手部でもかなり強いと言うけれど、実は可愛いものが好きだったり、乙女なとこは私達三人の中で一番かも知れない。
「とりあえず、いつも通りのクリスマスになりそうだよね」
私の諦めに似た声に、三人で顔を見合わせて笑うと昼ご飯を再開した。
「ゆいちゃん」
図書室で本を選んでいたら、にこにこと笑みを浮かばせて加茂君が声をかけてきた。
「加茂君も本を借りるの?」
「ううん、ゆいちゃんを探してたの」
私はその言葉に首をかしげた。
「24日、予定無ければ僕とデートしない?」
「へ?」
私は思わず変な声を出した。
「予定もう入ってる?」
「いや無いけど・・・・・・もしかしてまた何か手伝うとか?」
私の不審そうな目に、加茂君はびっくりしたような顔をして必死に手を振って否定した。
「実はね、24日と25日だけ、とあるカフェで限定デザートが出るんだけど、それがカップル限定なんだ。
東京に来たら絶対一度はそのお店に行ってみたかったんだけど、25日はすぐ実家に戻らないといけないから、もしゆいちゃんの予定が大丈夫なら付き合ってもらえないかなーと」
少し恥ずかしそうに頬をかきながらそういう加茂君に、あぁそういうことなのかと合点がいった。
「でも加茂君なら他の女の子に声かけたら誰でもOKすると思うよ?」
「急に動かないといけない時もあるし、相手の本性がわからないと気が抜けないでしょ?
そんな状態で楽しみにしているデザートを食べたくないよ」
そうか、前回みたいに仕事を頼まれたりすることもあるんだ。
確かに相手の子が陰陽師か普通の子かわからないのでは動きにくいのかも知れない。
「なるほど、私なら気を使わないですむもんね」
「そういう意味じゃなくて、ゆいちゃんなら僕も楽しく過ごせるってこと!」
もう!と可愛く怒る加茂君に、ごめんと笑って返す。
「うん、予定もないし私で良ければ付き合うよ」
「良かった~。
じゃメールで当日の待ち合わせは決めようね!」
じゃーねーと手を振って出て行った加茂君に私も手を振って見送る。
そして振り向いた時、机の並ぶエリアの生徒達と目が合い、一部の女子に睨まれた事に驚き、慌てて奥の本棚に引っ込んだ。