開かない。

ここはあまり人が来ない場所だけあって、文化祭で盛り上がった男女が時々入り込むこともあった。

現にドアに少しだけある磨りガラスには、人影のようなものが映っている。

まぁ脅かしてやろう。

俺は鍵を挿し、鍵を開けたと同時に勢いよくスライドのドアを開けた。


「「・・・・・・」」


そこには何故かメイドが居た。

ちょうど、前屈みにしている姿を真後ろから目撃した。

まっ白な太ももに長い黒のソックスが少し食い込んでいるのが、短いひらひらしたスカートの下からしっかり見える。

そのメイドはドアの開く音に気づいたのか勢いよく上半身を起こし、こちらを見て呆然とした後、しどろもどろに話し出した。


「あ、いや、急に頼まれて。

あ、ごめん、着替えるとこなくて・・・・・・」


こっちはドアに立っているというのに、少し離れた東雲の顔がみるみる真っ赤になっていくのが手に取るようにわかる。

もじもじと立っているせいか、その度にスカートがひらひら揺れる。


しかし、なんであんなにスカートが短いんだ?

そして、何であんな胸が強調した作りになってるんだ?

確かに平均より胸はあると思っていたが、単に余計に目立たせてるだけだろう。


ふと、背後から男子共の騒ぐ声がこちらに近づいているのがわかった。

一歩中に入って後ろ手でドアを閉める。

こんなのを男子が見たら、今夜のオカズが転がってたラッキーくらいに思われるのがオチだ。



「じゃ、じゃぁ」


急いで荷物を持って部屋を出て行こうとするこのメイドをどうすべきか。

まぁとりあえず。


「おい」


俺の声にびくりとして、わかりやすいほどおろおろして見上げている東雲が面白い。


「一枚写真撮ってやる」


「はぁぁああああ???」


「誠太郎に見せてやるよ」


「や、やだよ!無理!!」


何でこれから全身さらしに行く癖に写真一枚撮るのを困惑するのか。

まぁ、こいつが押しに弱いのは十分にわかっている。


「良いのか?誠太郎はお前の依頼を受けて、その出し物を成功させるために、わざわざ夜遅くまでお前のクラスで作れそうなレシピ考えて、手ほどきしたんだぞ?

おかげで誠太郎は菓子作り上手いってどこのクラスからも依頼されて、そのせいで教師の仕事が終わらなくなって何日も残業してたんだぞ?

良いのか?自分が頼んだものがこんなにもきちんとやれてますって報告しなくて」


自分でも驚くほどにすらすらと出てきた。

そしてわかりやすいほど、目の前にいるやつの目がぐるぐるとしている。

こいつの性格上、こう言われたら責任を感じて逃げられない。


「・・・・・・えっと、どうすれば葛木先生に良い報告できる?」


「だから写真撮ってやるって」


「や、でも」


ふむ、これはもう一押しだな。


「きっと俺だけ見たっていうと、私も東雲さんの頑張ってる姿が見たかった、とか言うぞ?

良いのか?あいつを除け者にして」


その言葉に、東雲の顔がうっ、となる。


「じゃ、じゃあ一枚だけ・・・・・・」




落ちた。



誠太郎を使って最後の一押しをしたのは正直面白くないが、まぁこれが一番効果がある。

しかしこんなに簡単に押し切られるようでこいつ大丈夫なんだろうか、自分でやっておいて何だが。