月曜日の巫女





落ち着いた声で淡々と詰め寄る目の前にいる人を見ていて、不思議と美しい、と思った。

だがそんな巫女は、私を何度も長の味方かと繰り返す。

ずっと光明の為に動いてきたのだ。

誤解など巫女にされたくはない。

私は必死に訴えようとした。


「も、もちろん私は光明の」


「嘘」


その澄んだ瞳は、何もかも見透かしているかのようだった。


「先生は藤原に、単に自分の理想の長として長く務めて欲しいだけでしょう?」


ざくり、と正面から刺されたような気がした。

私はずっと光明の為を思って行動してきた。

だからこそ今の光明の、長としての立場が築かれたことへ尽力した自負もある。

それが光明の為であり、正しいことだと信じて疑わなかった。

でもそれが違うとでも言うのだろうか。




「・・・・・・貴女は陰陽師の世界を知らないですから」


「だからこそ見えるものだってあると思います」


そうだ、彼女は知らないからそんなことを言うのだ。

あの京都側にすら安倍晴明の再来と言わしめた光明。

光明が何かを成し遂げる度、周囲がひれ伏していくのをずっと側で見てきた。

東京の陰陽師の長がそんなにも強く素晴らしい存在で、自分がその側近としていることが誇らしかった。

彼女が巫女であったとしてもまだ高校生。

長が強く存在するその意義を理解出来るはずもない。





「先生が、長としての藤原を維持することにしか頭にないのなら、信用出来ない」



だが彼女から向けられたものは、酷く冷たい目だった。

初めて彼女から向けられた敵意に私はどうしていいかわからない。


「何か誤解をしているのでは」


「先生は本音では巫女がいて欲しいんでしょう?」


「それは・・・・・・」


「藤原が無くしたいと行動してるのを側で見ているのに」


冷たい視線に絶えられず、私は少し顔を背けた。

そうだ、今回の事で痛いほど巫女の重要性を味わった。

光明は無くそうとしていても、きっと無くすことは出来ない、私はそうたかをくくっているのかもしれない。

光明も巫女がいて良かったと思う日が来るのではないだろうかと。


「あんなにも崩れた光明を戻せたのは巫女である貴女の力です。

正直に言うと、私は初めて巫女の存在の重要性を理解しました。

ですから光明ももしかしたら考えが」


「ほら、結局藤原の事を本当に第一には考えて無い」


どう言えば彼女は納得してくれるのだろう。

人の心など移りゆくものだ。

光明だってあんなに否定した巫女に助けられた。

東雲さんが巫女じゃないなんて光明が言うのは、自分が今まで否定し続けたのに、今更認めるわけにはいかないからでは無いだろうか。



「先生、まだ私が巫女だと思ってるんですね」


「はい」


「今回は巫女では無い私の言葉を、単に藤原が必死に聞いてくれただけです」


「いえ、貴女が巫女だったからこそ通じたんです」


「それは、藤原の意志を無視してませんか?

藤原は違うと言ってるのに、なんで先生が勝手に決めるんですか?」


「私が決めると言う事ではなく、単に事実を述べているだけです」


そうじゃなければ、何者の言葉も、私の言葉すら聞かず、誰も入れない結界の張られた部屋に入り、光明をこちらに戻した女性がただの一般人であるはずがない。




「・・・・・じゃぁ、今すぐ藤原が長を辞めると言ったら、どうしますか?」


「まさか!光明のような素晴らしい逸材は滅多に現れるものじゃないんです。

それを光明だってわかっています。

そのおかげでこの国はなんとかこれで済んでいるんですよ?

きちんと務めを果たすまでは辞めるなんてありえません!」


「・・・・・先生は藤原の一番の味方だと思っているんですよね?」


「もちろんです」


「なら、自分の理想の長に仕上げるんじゃなくて、藤原が間違っていたらちゃんと指摘して、そして他が全て敵になっても唯一味方で居る、ただの藤原光明を尊重してあげられる、一番の存在になるべきです」