「で、参考に聞くが、どんなのが欲しい?」


「食べ物とかじゃなくて・・・・・・置物とかがいい」


「置物ねぇ」


藤原が私の頭からカチューシャを取り陳列棚に戻しながら聞いた。

好きな人からプレゼントをもらえるなら、本音を言えばアクセサリーとかが良い。

でもそんな事恥ずかしくて言える訳が無い。

なら、ずっと無くならずに見ていられる物がいい。

そんな私の思いもしらず、藤原は顎に手を当て、きょろきょろと店の中を見渡す。


「他にも店があるんだよな?じゃぁ他の店も見てで良いか?」


「うん。シンデレラ城のとこにも色々お店あるし」


「じゃぁそうするか。

とりあえずこれ買ってくるから出口の所にいろ」


私は頷いてお店の出口に行くと、ふと振り返り、レジにいる藤原を見る。

今日は学校に着てくるようなシャツ姿ではなく、Vネックの白Tシャツの上に薄手のジャケット、黒の細身のパンツ姿だった。

いつもセットしている髪をおろして、眼鏡もかけているせいか、遠くから見る藤原は、私には知らない人のように思えてしまった。

そんな藤原を、近くに居た女性達が見ていることに気がついた。

もう一度良く見ると、他の女性グループも完全に藤原を遠巻きに見て、何かきゃぁきゃぁと話している。

あれ?藤原って格好良かったっけ?

あれ?もしかしてモテたりするの?

うちには葛木先生という王子様がいて私もファンだったせいか、藤原をそういう目で見たことが無かった。

でも思い返せば、クラスの女子にもファンが居たわけで。

腕を組んで考えていたら、頭を叩かれた。


「痛い」


「ほら、行くぞ」


少し振り返ると、さっきまで藤原を見ていた女性達に思い切り睨まれ、驚いて慌てて前を向く。

そっか、藤原って格好いいんだ。モテるんだ。

こんな事がなければ、そんなことずっと気がつかなかったのかも知れない。

横を歩く藤原を見て、今度は急に大人の男性に見え、気恥ずかしくなった。


シンデレラ城まで移動すると、そこにガラス細工のお店があり中へ入る。

さすがガラス細工のお店だけあって、シンデレラのガラスの靴も置いてあり、私は藤原とは離れたところで商品を見ていた。

藤原は一体何を見ているんだろう。

気になって目線を向けたら、あっという間に気がつかれ、手でしっしっと追い払われるような態度をされたので、しかたなく私は店を出た。

お店の入り口近くでぼんやりと立っていたら、頭を小突かれ、顔を上げればここのお店の袋を持った藤原が居た。


「パレード見るんだろ?」


「そうだけど、ここで買ったの?」


「さぁな」


どうみてもここのお店の袋が増えたんだからそうだと思うけど、あくまで内緒にするらしい。

なんだかそんな事すら可愛く思えて少し笑うと、そんな私を見て藤原は不思議そうな顔をした。



全ての荷物は藤原が持ってくれて、私達は既に出来上がっていた列に並び、美しい光を放つ夜のパレードを二人並んで眺める。

藤原と一緒に見られるのは最初で最後。

でも、きっとこうやって来られただけ幸せなんだ。

ずっと、巫女のことで苦しかった。

それを頑張ったご褒美がこれなのかもしれない。

美しい光を受けた好きな人の横顔を少しだけ見て、私はそう思った。