恋人同士ならドキドキするアトラクションも私からすれば切ないだけ。
私は少し落ち込みながら施設を出ると藤原が声をかけた。
「さて、次は?」
「うーん・・・・・・買い物がしたい!」
「へいへい、どうぞ」
アトラクションの建物から出てきたらもうだいぶ日が落ちていた。
夜のパレードだってもちろん見たい。
その前には買い物をすませたかった。
私は財布を持っていなかったが、土産が欲しければ出してやるから好きに買え、と言われ私は遠慮なくその申し出を受けた。
私が可愛い小さな箱に入ったお菓子を4つ持ってると、藤原が隣から声をかける。
「全部お前が食べるのか?」
「まさか!友達へのお土産だよ!」
「それ、誰と一緒に行ったって言う気?」
「あ」
私は項垂れると三つだけ棚に戻した。
「これは葛木先生の分」
「・・・・・・まだそんな事言うのか」
「え?何?」
ぼそりと呟かれた声が、私にはいまいち聞き取れなかった。
そのお菓子をカゴに入れ、それを藤原が持ってくれている。
他のコーナーを見れば、可愛いストラップがペアになっているものがあった。
私はそれを手に取る。
彼氏が居るなら、こういうのをお揃いでもてたら嬉しいのに。
じっと見ていたら、上から突然そのストラップの入った商品を藤原が取り上げた。
「ちょっと!」
「さすがに誠太郎にこれは無理なんじゃないか?」
眉を寄せて見る藤原に、私が未だに葛木先生を想っていると勘違いされたことに何故か焦ってしまう。
「違うよ。葛木先生は・・・・・・もういいの。
だって何においても藤原が一番なんだもの」
「まぁ、それはご愁傷様だな」
ため息をついてそう言った私に、藤原は、あまり感情の読み取れない返事をした。
「じゃぁなんか、俺がプレゼント買ってやるよ」
藤原はそのストラップを棚に戻しながら、私に背を向けてそう言った。
突然の言葉に私は驚いて目を丸くする。
失恋した事を聞いたし、色々申し訳無いと思ってなのだろう。
でもそういう事を言って貰えるだなんて思っていなかった。
「やはり菓子か?あぁ、これもいいな」
そういうと、すぐ側にある棚に沢山ぶら下がっている、ネコ耳の付いたカチューシャを一つ取ると、私の頭に無造作につけた。
「え~、違うのがいい」
不満げに言いながら頭に乗ってるカチューシャを触ろうとしたら、パシャリと音がした。
私はぽかんと前を見る。
そこには藤原が意地悪く笑ってスマートフォンをかまえていた。
そしてまたパシャリと撮る。
「何で撮るの?!」
「誠太郎に送ってやろう」
「絶対やめて!」
スマートフォンを取ろうとしたら、ひょい、と交わされる。
ほれほれとスマートフォンを真上でちらつかせられるが、どんなに背伸びして頑張っても、身長差は埋められない。
「・・・・・・実咲が何かあれば股間を蹴れって言ってた」
「すまん、やめてくれ」
私がじと目でそう言うと、さっと真顔になった藤原がズボンのポケットにスマートフォンをしまった。