ディズニーランドにつくと、私達はとりあえずご飯にした。

ほっと一息つくとお店を出て、照りつける太陽の下に出る。


「何か苦手な乗り物ってあるか?」


藤原は入り口でもらった園内の案内図を広げながら私に聞いた。


「ジェットコースターが苦手」


「ほう、じゃあまずはビッグサンダーマウンテンから」


「鬼!」


2人並んでアトラクションに乗って、パレードを見て、また他に移動して。

ふと周囲を見れば、カップル達が手を繋いで歩いている。


私は隣を歩く、背の高い想い人の手を見る。

触りたい。

何故かそういう気持ちが湧いてきて仕方がない。

昨日の夜は撫でることが出来た髪、触ることの出来た頬。

私の腰にあったあの腕に抱きついてみたいのに、もう出来ない。

それは私にとって拷問にすら感じた。


急に肩を引きよせられびっくりしてみあげると、呆れたような顔。


「ちゃんと前向いて歩けよ?今柱とぶつかりかけてた」


「あ、ごめん」


そういうとすぐに私の肩から手は離れた。

胸が締め付けられて、苦しい。

藤原にとって私は生徒で子供で、ここに連れてきてくれたのもあくまで昨日のお礼だってことくらいわかってる。

昨日まで無意識に出来たことが、好きだと認識した途端、果てしないハードルに思えてきた。

そんな事なら気がつかなければ良かった。

そうすれば、こんなにも苦しくなくて済んだのに。




「ここはカップルだらけだな」


ふいに言われ顔を上げ周囲を見る。

確かにこのアトラクションは少し暗く、2人きりで乗るせいもあってカップルが多かった。


「ディズーニーランドって来たことある?」


「あー、大学の時以来だな」


「誰と来たの?」


「誰って・・・・・・」


じっと私が見上げていたら、思い切り私の頭を掴んで逆を向かせた。


「痛いってば!」


「そういうお前はデート自体無いんだろ?」


馬鹿にするような声に私はむっとした。


「あるよ。失礼な」


「は?誰と?」


「加茂君と。

デートしようって誘われて、夏休み入ってすぐ渋谷とか原宿で遊んだもん。

加茂君モデルみたいだから、すっごく見られてた」


私は少し自慢げに話してみた。

もしかしたら何か反応してくれないかな。

そんな風に思った私が馬鹿だった。


「はー、高校生ってのはやっぱり渋谷原宿か。俺はあんなとこ無理だわ」


両手を少しあげて肩をすくめると、大げさに息を吐いた。

あぁ本当にむかつく。


「そうだよね!ディズニーランドですら、混んでる、暑いって言うし!」


「誰だって灼熱の下に居たくないだろ。良いねぇ若さって」


「嫌だ、おっさんくさい・・・・・・」


私のうんざりしたような声に、藤原の顔が引きつる。

そして私の顔に手を伸ばしたかと思うと、にやりと笑い、思い切り私のほっぺたをぐい、と伸ばした。


「何すんの!!」


「いや、餅みたいだなって」


へら、と笑った顔に頭に来て、私は藤原の足を蹴っ飛ばした。

なんで餅なのよ!悪かったわね!丸くて!


「悪かった。いや、良く伸びて良いんじゃないか?

悪かったから蹴るのやめてくれ」


ふとすぐ近くを見ればいくつかのカップルが私達を見ていた。

急に恥ずかしくなって仕方なく蹴るのをやめた。