「も?あぁ、藤原先生がなんか言った訳ね」
呆れたような声に、私は余計に馬鹿な事をしてしまったことに落ち込んだ。
「藤原先生は知らないけど、僕はゆいちゃんを嫌わない。
だって必死に僕を助けてくれた人だし。姉さんの事とは別だよ」
きっぱりと言ってくれた言葉と、その優しい眼差しに、私の胸が少し苦しい。
「あれは、本当に酷い事してると思っただけで」
「術で縛られるし、でっかい式が身体を押さえこむし、ほんと散々で。
あんな圧倒的な力で屈服されたことなんて初めてだったから、未だに思い出すたび泣きそうになるよ」
「そんなことされたんだもん、藤原のこと、嫌いになったでしょ?」
「うーん、それが、そうでもないんだよねぇ。
なんて言うか圧倒的な実力を味わって感動している部分もあるんだ。
今のジジイ達なんて実力もあまり無いのに、口だけ偉そうな人ばかりで。
そんな中で若手筆頭でもある藤原先生があれだけ凄いと、時代がかわるって感じするし。
まぁ京都だって負けてないけど」
予想外の答えだった。
もう二度と近づきないとか嫌いになると思っていたのに。
そんなにも陰陽師の中では藤原の力は凄くて魅力的だったりするのだろうか。
「そういえば、あの学校、晴陽学園の存在意義って知ってる?」
私は突然の質問に少し驚いた後、首を横に振った。
「ゆいちゃんは、本当に何も知らない人としてあの学校にいるんだね」
「どういうこと?」
「かなりショックな話しかもしれなんだけど、聞きたい?」
加茂君の瞳がまっすぐに私を見る。
ここまで言われて聞きたくないなんて言うわけがない。
私が、聞きたい、と返すと、加茂君は静かに頷いた。
「あの学園はね、色々と意味があるんだ。
一つは位置。
皇居、というか江戸城の鬼門に学園は配置されてるんだ。
鬼門ってのはそこから魑魅魍魎が入ってくるとされてて、そこを塞ぐことは大昔から都を守るために当然すべきこととされてる。
京都だと、元々の安倍晴明邸で今の京都トップのいる本邸が、同じ役割を今もしてる。
あの学園は浄化された上、鬼門も塞いでいる、東京にとって大切な要石なんだ。
二つ目は、学園にいる人達。
あの学校に入るのが特殊だってのは知ってるよね?
あそこは元々は陰陽師の家系の者を預かる場所だったんだ。
でも今はそれだけじゃなくて、霊力の強い者や、今後伸びる可能性のある者も広く入学させてる。
実は自分が陰陽師の家系だと知らない人達も沢山いるんだけど。
教師やスタッフもほとんどが関係者なんだよ」
私は静かに説明する加茂君の綺麗な横顔をじっと見ていた。
何もかもが知らない事ばかり、驚くことばかりで逆に反応のしようがない。
しかし学校の生徒が陰陽師の家系の人が多かっただなんて。