「今後二度とゆいが嫌がることはしないと誓う?」
真顔で聞く塔子に、加茂君は、うんうん、と勢いよく頷いている。
それを見て、実咲がため息をついた。
「ここのとこ落ち込んでいるから、ぱーっと楽しませてあげるなら貸してあげてもいいけど」
「もちろん!デートに誘うんだから頑張るよ!東京よくわからないけど!」
「ちょっと待って!私を勝手に売らないで!」
あきらめ顔の実咲と塔子に、思い切り笑顔で握手している加茂君に割ってはいる。
「じゃぁ明日朝9時に正門前でいい?あ、これ僕の連絡先。
必ず後でゆいちゃんの連絡先送ってね?んじゃ!」
そう言って、加茂君は私に紙切れを手に握らせると、笑顔で去っていった。
「出席日数大丈夫なのかしら」
「補講とかあるんじゃない?」
「いやいや、2人とも!」
未だ手を振っている加茂くんをあきれ顔で見ながら話している2人に、私はつっこんだ。
「気分転換して来なよ、藤原先生と喧嘩したんでしょ?」
私は実咲のその言葉に思わず絶句する。
そんな私を見て、実咲がため息をついた。
「うちらが気がついてないとでも?
あんなあからさまに逃げていればわかるよ」
「以前も二人して口聞かないことあったけど、今回は比じゃないみたいだし」
塔子は淡々とそう述べて、そんな2人を前に私は途惑っていた。
そして急に思いだす。
塔子は人のオーラを見て、その人の感情とか色々わかるということを。
私は塔子を見て、おずおずと口を開いた。
「あの、藤原のオーラって見たことある?最近で」
塔子はそんな私の顔をみて、ため息混じりにこう言った、
「知りたいならいい加減逃げずに、直接話した方がいいよ」
私は、心の中を見透かされているようなその塔子の視線に思わず俯いた。
「ほらほら、落ち込まないで。
せっかく加茂君がデートに誘ってきたんだからさ、思い切り遊んで来なよ。
もし何か嫌なことされたら、股間蹴っ飛ばしてくれば良いんだから」
場を和まそうと明るくそう言った実咲に、私は、ちょと最後のそれは難しいかも、と返すと、今夜練習すれば?と笑われた。
「・・・・・・実咲、塔子、ありがとうね」
ずっと自分の事で一杯一杯で、親友達が見守っていてくれたことに私は気がついていなかった。
こうやって見守って、背中を押して、そしてちゃんと注意してくれる2人がいることを、私は心から感謝した。