「みんな、無視は酷くない?!」


顔に両手をあてて、酷すぎる!と嘆くその男子に私は途惑った。

横にいる実咲と塔子を見ると、とても複雑そうな顔をしている。


「塔子ちゃんはすぐ気がついてた癖に!」


「突然馴れ馴れしく名前で呼ぶ男子って、チャラい」


塔子が冷めた目で見ると、彼はうぅ、と苦しげに声を出したかと思えば、今度は実咲の方に勢いよく向いて問いかけた。


「実咲ちゃんも気がついてたでしょ!」


「今どき高校デビューとか痛いし」


突き放すような実咲の言葉に、2人の愛が痛い!と彼は身体をねじった。


「えっと?」


私は何が何だかわからず、再度実咲と塔子を見た。


「ゆいちゃん、僕だよ、僕!」


いつの間にか私の目の前にきて、必死に自分の顔に指を指している。

綺麗な色素の薄い瞳と、長いまつげ。

こんなイケメン、知り合いにいただろうか。

私はそんな彼を見て首をかしげた。

彼は途端に思い切り悲しそうな顔をした後、がくりと肩を落とした。


「学校にほとんど来てないんだから、ゆいから忘れ去られても仕方ないんじゃない?」


「実咲ちゃん、酷い・・・・・・」


2人のやりとりでもしや、と彼の顔を観察するように見る。

そうだ、このタレ目、見覚えがある!


「もしかして加茂君?!」


「やっと正解出たよ!」


突然ぎゅと抱きしめられて、私はひゃ!と声を漏らした。


「はいはい、セクハラやめようねぇ?」


目の据わった実咲に首根っこを掴まれ、加茂君は、冗談冗談!と必死に手を振る。

私はまさかの加茂君の登場にぽかんとしていた。


「高校デビュー?」


「ゆいちゃんまで酷い!これは地毛!

僕は日本人とフィンランド人のハーフなの!」


えへん!と自慢げに言う彼に、現代はハーフも陰陽師になれるんだ、グローバル!と驚いた後、陰陽師という言葉を思いだし、私の中で必死に閉じているものが反応しそうになった。


「それでね!ゆいちゃんをデートに誘いたくて、今日は久しぶりに学校に来ました!」


「・・・・・・は?」


眼鏡もなく、大きな瞳がわかって、何だか子犬がじゃれている気がする。

身体は子犬じゃないけど。


「ねぇ、実咲ちゃん、塔子ちゃん、いいでしょ?」


何故かその許可を私ではなく、隣りにいる実咲と塔子に求めている。

実咲と塔子は真面目な顔で向かい合いながら、私をそっちのけで協議に入っているようだった。