急に酷くめまいがして目が覚めた。

目を開けようとしても何故か開けにくい。

自分の手を伸ばし、目の回りを触ると涙が乾いた跡なのか、とても硬くなっていた。

そんなにも私は泣いていたんだということを、目をさすりながら思っていた。

うっすら開けた目で周囲を見れば、白い天井、周りには白いカーテン。

自分は今、保健室で寝ている。

ただそれだけの事実をぼんやりと思っていた。

ゆっくりと上半身を起こす。

まだ吐き気とめまいがする。


ふらっとして自分の左手を目に当てた。

その時、ゆっくりとカーテンが開き、私は無意識にそこへ視線を向けた。


「目が覚めたんですね、良かった」


そこにはホッとしたような顔の葛木先生が入ってきた。

何が良かったというのだろう。

言葉を発する気力も起きず、私は視線を下に向けた。


「・・・・・・。

あなたを校内で探していたら倒れているのを見つけて。

それで、保健室に運びました」


私は俯いたまま特に反応しなかった。


「加茂君は奥のベットで寝ています。

もう少ししたら彼の関係者が迎えに来ますので安心して下さい」


先生が何か話している。

でもそれが、ただの雑音として聞こえているかのようだった。

私は起こしていた上半身を再度ベットに倒し、先生に背を向けて、頭まで毛布を被った。


「本当に・・・・・・本当にすみません・・・・・・」


葛木先生の声が震えているように聞こえる。


「あんなにも光明が暴走するなんて考えていなかったんです。

私の忠告にも一切耳を貸さず、私は途惑うばかりで何も出来ませんでした。

だけど、東雲さんなら止めてくれる、光明をまたいつものように戻してくれるとすがってしまったんです。

でも」


言葉が切れた。

私は先生の方を向く気などおきなかった。


「でも、まさかあなたまで拒絶するなんて・・・・・・。

私と光明が結果的にこんなにも東雲さんを傷つけてしまった事は、謝って済む問題だとは思っていません。

償えるとは思っていませんが、私のできる事はします。

・・・・・・寮まで送ってくれる女性の先生を呼んできますから、もう少し寝ていて下さい」


そういうとカーテンを開ける音がした。

あぁ、やっと出て行ってくれる。


「それでも。

それでも光明を助けられるのは東雲さん、貴女だけだと私は思っています。

どうか、あの子を嫌わないであげて下さい」


そういうと足音が遠ざかっていく。

私は先生の最後の言葉で、夢の中で出会った、あの少年の言葉を思いだしていた。


『未来の僕を、嫌わないで』


ただの夢ではないと思っていた。

きっと私は違う時間、違う場所にいるのだと、自然と理解していたからだ。

あの小さな男の子はやはり藤原の子供の頃で、今日のことをわかっていて言ったのだろうか。

でも、もう遅い。

加茂君に、罰だからとあんな酷い事をした藤原は許せない。

なのに。

あんなに凍り付いた藤原を心配してしまう自分がいて嫌になる。

嫌われるのは当然だ、あんな酷い事をする人を許しちゃいけない。

私はそう言い聞かせながら、ベットで身体を丸めた。