「震えて、怯えてて、最後は訳の分からない状態になって倒れたんだよ?!
なんであんな酷い事するの!?」
藤原は再度私に軽く視線を向けると、こう言った。
「俺のテリトリーで勝手な事をした罰だ」
「ただ私に邪気を見せただけでしょ?!
それで高校生にあんなことしなくても!」
「高校生だから、何?」
冷たい目に圧力を感じて、思わず身体が後ろに下がりそうになる。
「高校生だろうがなんだろうが、陰陽師である以上、従うものには従わなければならない」
自分以外の意見は一切聞かないと切り捨てるような言葉に、私は怯みそうになった。
「でも!藤原はとても強いんでしょう?!
それをあんな風に酷く使うなんて卑怯だよ!
単に言葉で注意すれば済むことじゃない!」
そうだ、そんなにも強い立場なら、話せば加茂君も従ったはずだ。
それなのに、何故あんな酷い仕打ちをしなくてはならいのか。
「お前は、物事全て、話し合いで解決するとでも思っているのか?」
「え?」
無表情に突然そんなことを問われ、私は途惑った。
「人間ってのはな、どんなに理想を言ったってその相手が弱ければ、話を聞くというテーブルにすらのらないんだよ。
じゃぁどうするか。
それは、自分が強いと言うことを相手に示すしかない。
こいつは、状況によってはこちらを潰せるほどの力を持っている、ならまずは話し合いを提示するならそれに乗ろう、というようになるんだ。
逆にその力量をわからないで先に攻撃しそうな連中には、最初に力でねじ伏せてしまえばいい。
攻撃されてからでは遅いんだよ。
スイスは永世中立国って知ってるよな?
あの国は自国に最新鋭の武器を持つ世界でも屈指の軍事力を持つ国だ。
国民の男は兵役義務があるし、有事の際多くの男は軍人として従事する。
いざとなれば徹底的に相手を潰せるだけの力を保持している。
だが外交では平和主義で他国の仲裁すら行う。
何故そんな事ができるのかわかるよな?
圧倒的な力を持つからこそできる事なんだよ」
私は立ったまま淡々と話す藤原の話を、未だ怒りの治まらない頭でなんとか聞いていた。
「で、藤原が言いたいのは、何?
だから加茂君を力でねじ伏せたのは仕方がないってこと?」
何となく言いたいことはわかる。
でも、だから加茂君を傷つけて良いだなんて、私には思えなかった。
藤原は、肩を上下させ、ふぅと軽くため息をつくと、また私を見上げた。
「お前はもう少し聡いと思っていたけどな」
馬鹿にされたその言葉で、また一気に頭に血が上る。
「馬鹿で悪かったわね!
あんなに怯えて倒れるまでする藤原の理由なんてわかんないよ!」
涙が出そうだった。
酷い事しないでってだけのことが、何でこんなにも伝わらないのだろう。