月曜日の巫女






「あの、それで、放課後の、どうでしょうか?」


昼休みがスタートし、おにぎりをほおばろうとした瞬間、
突如現れた加茂君に私は口を開いたまま見上げた。
そんな事、すっかり忘れていた。


「買い物、男子誘った方が良いんじゃない?」


一緒にご飯をしている実咲が側に立っている加茂君に声をかけた。


「あ、いえ、買いたいのは女性用のものなんです」


もじもじと小声になってきた加茂君に、
実咲と塔子と私は顔を見合わせた。


「実は、姉の誕生日が近くてプレゼントを買いたいんです」


「加茂君ってお姉さんいるんだ」


「はい、凄く優しい人なんです」


私の何気ない言葉に、加茂君は少し照れたように笑った。
その反応に再度私達は顔を見合わせた。


「そういう事かー。
 私、放課後暇だから付き合うよ?
 塔子も今日は部活無いでしょ?」


「まぁそうだけど」


私を置き去りにして実咲は塔子にそう言うと、
塔子は微妙そうな顔をした。


「女子が3人もいればプレゼントの選択肢も広がるし。
 んじゃ、掃除終わったら正門前集合ね」


実咲はにかっと言った。
加茂君はどうみても押され気味だったが、
ありがとうございます、と一言言うと教室を出て行った。


「まずかった?」


実咲が私を見て尋ねる。


「ううん、むしろ助かった。ありがとう」


実咲が気をきかせてくれたのはわかっていたので、純粋にありがたかった。


「でも塔子、加茂君の事、苦手っぽかったけど大丈夫?」


私は未だ黙ったままの塔子に聞いた。


「まぁ実咲もいるし、大丈夫」


あきらめ顔で実咲は手作りのお弁当からミニトマトを摘んだ。
実咲が居れば良いんだ、私は少し切なくなった。


「それにさ、剥がしたいと思わない?あの加茂君の演技」


「えっ?」

実咲がにやっと笑って言ったその言葉に塔子が頷いてるのを見て、私は驚いた。
藤原が言ってた事は本当だったの?


「加茂君ってあれ、演技なの?」


「そうよ、まとってるオーラが違いすぎる。
 それになんかまた別の何かを隠している感じだし」


塔子は霊感が強いらしく、特に人のオーラが見えるそうで、
もちろん普段は意識をしないと見えないそうだが、
時折突然飛び込んできて意図しなくても見えたりするらしい。
この事はだいぶ親しくなってから、ふとした事で塔子が話してくれた。
子供の頃、無邪気にそういった事を話して、
学校でいじめに遭ったり、好奇の目で見られていたらしい。
だから信頼出来る人間にしか話さないという事だった。


「へぇ、さすが塔子。
 私は勘だな。
 クラスの男子と親しくなるような事しないで、
 なんでゆいを転校2日目で誘うのよ。
 違和感しか無いね」


塔子と実咲が持論を述べるのを、私はぽかんと聞いていた。
でもまだ信じられなくて、私の思い当たる事を話してみた。


「昨日職員室を案内したら急に懐かれた感じなんだよね。
 なんか寂しげなわんこみたいで放っておけなくて」


「そのお節介気質、ゆいの良いとこだけどさ、
 詐欺とか簡単に引っかかりそうで心配になるんだけど」


実咲が紙パックのジュースのストローを吸いながら、呆れ気味に私に言う。
詐欺にはさすがに引っかからないと思うけどそう思われていたんだ。
がくりと肩を落とす私に、塔子が淡々と話し出した。


「まぁ3人でいけば彼も変なことしないでしょ。
 とりあえずゆいは彼が泣き落とししてきても無視するように」


「はい・・・・・・」


私は心強い友人を持ったことに感謝しつつ、
何だか自分があまりに危なげに見られていたことにショックを受けていた。