「だからこうやってお前の恋を応援してやろうと」


「信用出来ない」

私の軽蔑を含む眼差しに、藤原はうっとなった。


「わかったよ」


藤原は少し黙っていたが、しばらくしてため息混じりにそう言った。
立ち上がるとカップを持ってぐい、と飲んだ。
そして私のすぐ側まできて少し笑って私を見下ろした。


「じゃぁお詫びがてら、
週末の土曜日でも少し事情を話してやろうか?」


「えっ、いいの?!」


思わず前のめりに席を立った。
その私の食いつきに、藤原は驚いた後、
思い切り笑い出した。


「もちろん全部じゃなくて少しだけだぞ?」


「ケチ!沢山話してくれてもいいじゃない!」

私の抗議に藤原は楽しそうに笑っている。
うん、やっぱり藤原はこっちの方がいいな。


「お前のことは俺が守るから、何も心配するな」


そういうと、大きな手が私の頭をくしゃりと撫でる。

目だけ少し見上げると、藤原はふわっと笑った。
何だろう、くすぐったいような、心がほっとするような。
私は何か良くわからない感情が襲ってきたことに、思わず俯いた。
ん?でも前回これで能力を閉じたとか言ったっけ。
まさか今なにかされたから身体が反応したの?


「今、何かしたんじゃないよね?」


まだ私の頭の上に藤原の手があるまま、私はじろりと見上げた。


「記憶とかは消してないぞ!」


「じゃぁ他の事、したんだ」


「してないって!
なんかこう、さわり心地が昔飼ってた犬のさわり心地に似てるな、と」


「私、犬と同じなの?!」


「あ、いや違う違う!さわり心地だって!」


必死に否定する藤原を見てなんだか馬鹿らしい気分になって、
笑いがこみ上げてくる。
それに気がついたのか、藤原はちょっとホッとしたような顔をした。
私はすぐ側に立ったままの藤原に、右手を差し出した。


「じゃぁ土曜日色々話してくれるって事で」


仲直りの握手じゃない。
わかるでしょ?
私の伸ばされた手と私の顔を交互に藤原は見た後、
苦笑いを浮かべておずおずと私の手を握った。
とても大きな手。
暖かさがゆっくりと伝わってきて、私は何故かとてもホッとした。


「お前は、ほんとに・・・・・・。
 じゃぁ土曜日1時に駅前な」


そういうと藤原は笑った。
私はぶんぶんと大きく振った後、繋がっているその手を名残惜しい気持ちで離した。

藤原の本当の意図なんて気がつかないまま。