「葛木先生」


私の問いかけに、葛木先生が困ったような顔をしている。
まるでこれからの質問がわかっているかのようだ。


「ようは側に居るより、握手の方が手っ取り早くて良いんですよね?
もっと手っ取り早くて強力なのってあるんですか?」


だってそんなのがあれば毎週やらなくて済むだろうし、
藤原だってもっと楽になれるかも知れない。
でも私のそんな質問に、葛木先生の笑顔が思い切り引きつった。
私はその意味がわからず、葛木先生の隣に座る藤原を見れば、
また机にほおづえをついて外を見ている。


「ねぇ」


「俺は知らないよ」


一切私の方は見ないで藤原はそう言い切った。
再度葛木先生を見ればばっと目を反らされた。
なんなのよ、本当に。


「とりあえず」


葛木先生がまだ引きつったままの笑顔で声をかけてきた。


「毎週月曜日に今度は私の手伝いをすると言う事で放課後ここに来て下さい。
光明とはここで会うという事で」


ね、と藤原と私を交互に見る。
藤原はまだ外を見たままだ。


「ちょっと、葛木先生が話してるじゃない。
それに私が来ないと困るんでしょ?」


「大丈夫だと俺は言った」


「どうしてそう意固地なのよ!」


プルルルルルル。
突然部屋の電話が鳴った。
葛木先生はちょっとすみません、というと電話を取って話し出した。


「すみません、職員室から呼び出しがあって今から行ってきます」


「気にせず行ってこい。
もう解散でいいよな?」


「行ってらっしゃい」


私は軽く手を振って笑顔で葛木先生を送り出す。
葛木先生は途惑った表情のまま、じゃぁ行ってきます、と部屋を出て行った。
廊下側のドアのカギを開ける音がして、先生が完全に出て行ったのがわかった。




「なぁお前、誠太郎のこと好きだろ?」


「は!?」


突然脈絡もなく話しを振られ、私は大きな声を出した。


「今、あいつフリーだぞ。
お膳立てしてやろうか?」


藤原はテーブルに肘を付きながらにやにやと私を見ている。
私は一気に顔に熱が上がるのがわかった。