「まぁまぁ二人とも」
宥めるように声をかけた葛木先生を私達は同時に睨んだ。
それを葛木先生は一瞬ぽかんとしたあと、
やはり口に手を当てて肩を震わせながら笑うのを堪えている。
葛木先生って笑いの沸点が低いのだろうか。
「で、私との約束を破った理由はなに?」
私は部屋の真ん中にある四角いテーブルにある椅子に、
藤原に向かい合うような形で腰掛けた。
葛木先生は藤原の近くで私へのお茶の準備をしてくれているようだった。
「転校生来ただろ」
「それがなに?」
「もう接触されてしまいましたよ」
藤原の質問に意味がわからず返すと、葛木先生が藤原に声をかけた。
「さすが。早いな」
「本当に東雲さんだとばれてはいないんですよね?」
「二人で話し進めないで下さい。
さっぱりわかんない」
真面目な顔で話し出した二人に、私は割って入った。
「加茂清輝は陰陽師だよ、京都のな」
藤原の淡々とした声に、私は思わず固まった。
え、あの加茂君が陰陽師?
「もしかして私幽閉されるの?!」
そうだ、そんな話しがあった。
私は思わず立ち上がって声を上げた。
「いえ、そういうところまで進んではいません」
進むって。
私は顔を強ばらせた。
「先日の一件で祈祷中に俺の側に誰かがいたことが京都側にばれたんだよ」
「京都側って何?」
「陰陽師は現在所属が京都と東京で分かれているんです。
陰陽師としての血筋は京都の方が上ですが、
東京も今ではこれだけの首都。
2つで長く日本を守護できるように、お互いの独立を尊重しつつ、
力を私利私欲のために利用したりしないように、相互に抑制しているのです。
ちょっと違いますが、三権分立みたいなものです」
葛木先生が私に紅茶の入ったマグカップをくれ、
私を座るように促すと先生も藤原の隣に座り、
いかにも社会科系の先生らしい説明をした。