月曜日の巫女




「ありがとうございました」


職員室につくと彼は律儀にお辞儀をした。


「お辞儀とかいらないって!
あと敬語もいらないからね」


私の言葉に彼はじっと私の顔を見た。
前髪と眼鏡のせいかいまいち彼の表情がわからない。


「あの、その・・・・・・」


実はこっそり藤原と葛木先生がいないか職員室の中を見ていた私は、
声をかけられびくりと彼を見た。


「もしこの後予定とか無かったら・・・・・・、
学校の中を案内してもらえないでしょうか」


俯いたままそんな事を彼に突然言われ、私は困惑した。
今見たら職員室に二人は居ないようだ。
ならいつもの場所にいる可能性があるわけで。
加茂君は私の葛藤など気にもせず、
俯きがちに少しもじもじとしている。
私は申し訳無いけど断りの言葉を口に出そうとした。


「あの・・・・・・やはりご迷惑です、よね・・・・・・」


加茂君は眼鏡を通し、じっと私を見ていた。
少しタレ目の大きな瞳が潤んでいるように見える。
あぁ!そんな捨て犬みたいな目で見ないで!
私は思わずその寂しそうな態度に、
断るための言葉を出しそびれた。


「すみません・・・・・・。
突然失礼な事を・・・・・」


「あ、いや、そんな事ないよ!」


「じゃぁ案内して頂けるんですね!良かった!」


ぱっと加茂君が顔を上げる。
しまった!誤解される返事しちゃったよ!
そんな私の動揺などお構いなしに、
目の前に居るわんこの尻尾がぶんぶんと振りだしている気がした。
だめだ、もうこんなの断れない。


「う、うん。
ちょっと用事あるから長くは無理だけど、それで良いなら」


「ありがとうございます!」


ぱっと下がっていた耳が立ち上がっているように見えた。
彼は、すぐ用事を済ますので待ってて下さいね!と言うと、
足早に担任の元へ向かっていった。




「あれ?ゆい?」


背後からの声に振り向けば塔子が日直の日誌を持って立っていた。
私は成り行きで転校生の案内をすることになったことを話した。
それを聞くと塔子は少し黙ってしまった。


「加茂くん、あまり信用しない方が良いと思うよ」


「えっ?」


そんな事を真顔で言う塔子に私は驚いた。


「多分あれは」


「お待たせしました!」


さっきまでとはうってかわって、
はっきりした声を背後からかけられ私はびくりとした。
そこにはおどおどなどしていない、
何か嬉しそうな加茂くんがいた。
そんなに案内してもらうことが嬉しいのだろうか。
言葉を言いかけてた塔子に私が再度振り向くと、
眉間に皺を寄せている。


「お節介もほどほどにね」


「あ、うん」


塔子はそういうと、私と加茂くんの前を通り職員室に入っていった。


「クラスの人ですよね?」


「うん」


「何やら僕は嫌われてしまったようです・・・・・・」


「え、そんな事無いんじゃないかな」


寂しそうにする彼にフォローを入れた。
だが塔子がそんな事を言うのは初めてだ。
以前塔子が話してくれた事と何か関係があるのだろうか。
私は気になりながらも学校の案内を始めた。