月曜日の巫女




先生はおもむろに上着の内ポケットから小さな双眼鏡を出して私に手渡した。


「これで、あの人達を見てみて下さい。
知っている人はいませんか?」


また試すように言う先生に私はむっとしてしまう。
葛木先生はこんな意地悪な人だったのだろうか。
私は手のひらくらいの双眼鏡を受け取り、
小高い丘にむけ中をのぞく。
そこには祭壇のようなものと、それを取り囲む人達がいた。
服装はテレビなんかでも見た、
陰陽師が着ていそうな装束のようなものを着ている。
知っている人は居ないかと聞くのだから、きっといるのだろう。
私はゆっくりと顔が見える人を特に重点に見ていった。


「えっ」


思わず声が出た。
祭壇の最前列で座っている一人の男からは全く違うものを感じた。
強い、という感想しかない。
だがその横顔に見覚えがった。


「先生、もしかして」


私は双眼鏡からゆっくり顔を離すと、横にいる葛木先生を見る。
私の顔は強ばっているかもしれない。


「えぇ、光明ですよ」


私に少し顔を向けた後、また先生は丘の方へ顔を向けた。
再度双眼鏡で藤原を見る。
顔に覚えはあるのに、なんだかあそこにいるのは別の人に思えた。
でも葛木先生は藤原だと断言した。
服装が違うからだろうか。
いや、今ならわかる、他のそこにいる人とはレベルが全く違う事が。


「光明はね、東京の陰陽師を統べる長(おさ)なんです」


ぽつりと呟かれて私は驚いて葛木先生を見た。


「あの藤原が?」


「えぇ」


私の声に、先生が苦笑いで答えた。


「やっぱり一番強いとか?」


「はい、私なんかより遙かに」


やんわりとした声には何か尊敬のようなものが含まれているのを感じた。
いつもは葛木先生が藤原のお兄さんという感じにしか思ってなかったから、
この先生の反応がいかに藤原が凄いのかを実感させる。
そんな先生の表情が急に曇った。