「さて次行こ!」


そういうと加茂君が私の手を取り、最初乗ったエレベーターとは違うところに乗り込むと、今度は降りる。

そこは最初に着いた一階ではなく、途中のフロアだった。

そのまま着いていくと、空中庭園という表示が見えた。


ホテルからの外に出るガラス戸が開くと、そこには広い庭園が広がっていた。

まだそこまで遅い時間では無いけど外はすっかり暗くなっている。

屋上とは思えないほど沢山の植木があり、クリスマスのデコレーションされたイルミネーションが美しく飾られ、周囲には高いフェンスがあるが、外の夜景を望むことが出来る。

中を歩けば至る所にベンチがあり、カップルだらけ。

それもみんな密着して、キスしているカップルを見かけてしまい、私は思わず目をそらした。





「こっちこっち」


ずんずん奥に進む加茂君に私は引っ張られていく。

着いた先のベンチはちょうど植木が周囲にあってまるで秘密基地のように誰もいなかった。

そこに加茂君は座り、私も座ると手が解放された。


「あのね、これ」


なかなか渡すチャンスが無かったけど、もうここしかないと私はずっと持っていた小さな紙袋を加茂君の前に差し出す。


「あんな素敵な食事には釣り合わないけど、よければ使って」


「え?僕に?」


「うん、クリスマスプレゼント」


「開けて良い?」


そういうと、加茂君は紙袋の中のラッピングされた袋を開ける。

出てきたのはシンプルな濃い緑の手袋。

手首の所にイニシャルのKが赤で入っている。

お洒落な加茂君へのプレゼントに悩んだけど、これなら学校行くのに仕えるかなと選んだ品だ。


「これ、もらっていいの?」


「もちろん。加茂君お洒落だからかなり悩んだんだけど、これならいくつか持ってても邪魔にならないかなって」


加茂君はじっとその手袋を見た後、くしゃりと笑った。

ちょっと泣きそうにも見えて私は途惑った。


「ごめん、嫌だった?」


「ううん、とっても気に入ったよ、ありがとう」


「そっか、良かった」


「ごめんね、僕プレゼント買って無くて」


「何言ってるの!こんなとこ連れてきてくれて、美味しいご飯奢ってもらってこっちが申し訳無いくらいだよ!」


加茂君が私にしてくれた事に比べたら、本当に大した事はしていない。


「ゆいちゃんはほんと良い子だなぁ」


優しく微笑まれて、私は思わず俯いた。

元々が凄く格好いいのだから、そんな風に微笑まれると何だか恥ずかしい。

あ、そうだ、という加茂君の声に顔を上げる。


「ゆいちゃん、ちょっと目を閉じててくれる?」


にっこりと微笑まれて、私は不思議に思いながらも、うん、と返して目を閉じた。
また何か陰陽師として仕事でもするのだろうか。

じっとしていたら、頬に手がゆっくり触れたのがわかり、びくりとする。

これは目を閉じてて良いのだろうか。

思わず身体を強ばらせた。