「こちらです」
加茂君がカフェの受付で予約していることを伝えると、男性スタッフが笑顔で中に案内する。
案内された席は大きな窓に面した席だった。
二階分までありそうな広い窓にそって、ずらっと二人席が並んでいる。
その大きな窓からは都心が一望できて、夜景もとても美しいだろうと思った。
左右を見れば見事にカップルだらけ。
スタッフさんがコートを預かってくれ、椅子を引いてくれる。
私はドキドキしながら席に座った。
「例のメニューは既に予約してあるんだ。というか予約限定だから」
「そうなんだ、ありがとう。加茂君慣れてるね、こういうとこ」
「あぁ、京都にいた時は結構こういう場所で会合や打ち合わせとか多かったからかなぁ」
「私は初めてでドキドキだよ」
「ゆいちゃんの初めてを貰えるなんて嬉しいなぁ」
加茂君はにっこりと微笑んで、私も釣られて笑った。
しばらくして運ばれてきたのはクリスマス限定のアフタヌーンティーセットだった。
焼きたてのスコーンやサンドイッチの他に、ツリーに見立てた小さなパフェや、星型のチョコレートとかデコレーションも凝っていて、見ているだけでわくわくしてしまう。
それを早速加茂君は写真を撮り始め、私も慌てて撮影した。
「あーやっぱり美味しい-!」
幸せそうに小さなチョコを口に入れ、頬に手を当てて加茂君はうっとりとしている。
なんだかそんな顔を見ているだけでこっちまで嬉しくなる。
「加茂君は美味しそうに食べるよね」
「そう?」
「うん。見てて嬉しくなる」
私の言葉に目を丸くすると、少し照れたように頬を掻いた。
「実家はご飯の時って和気藹々なんだけど、これが加茂家一族の集まりだともう息が苦しくなる感じで、豪華なものが出るけど食べてて味を感じないんだよ。
食べるなら美味しく食べたいよねぇ」
しみじみそう言うと私を見た。
「ゆいちゃんも僕と食べてて美味しい?」
「もちろん!」
私の答えに加茂君は満足そうに微笑むと、二人でわいわいと素敵な景色を眺めながら美味しい食事を堪能した。
食事も終え、ちゃんと自分の分も出そうとしたら、いつの間にか加茂君が会計を済ませていて、私はおろおろとお店の外に出た。
「ねぇ、ちゃんと自分の分出すよ」
「僕が奢るって言ったでしょ?
あのね?そう言われたら男を立てて、ただお礼を言えばいいの。
素敵なレディはこんな場所で男に恥を欠かせてはダメだよ?」
少し私に目線を合わせて、小さな声でそう言うと、ウィンクした。
私は顔が熱くなるのを感じながら頷いた。
「えっと、美味しかったです。ありがとうございました」
ぺこりとお辞儀をすると、加茂君はにっこりと微笑んだ。
何だろう、このスマートさ。
女性慣れしてるっていうのかな、こういうの。