(葵宇宙? 彼が何だというのだろう?)

疑問に思っていると、校医が「教頭、ほらあの満点で合格した」と急き立てるように言う。
女性教諭は教頭だった。でも、そんなことより、入試で満点? この綺麗な男子が……? 『天は二物を与えず』はやっぱり嘘だったと確信を得る。

「君はどうして新入生代表の挨拶を断ったんだい?」

こんな時にそんな話が必要なのだろうかと思ったが、どうやら校医は時間稼ぎをしているようだ。地上では、異変を感じた人々が動き出していた。

「断ったのはそうして欲しそうだったからです。だって、理事長の息子でしょう? 挨拶した彼って」

教頭がバツの悪そうな顔をする。
校医が呆れたようにチッと舌打ちをした。

「校長と結託したんですね! 全く、権力に屈するとは情けない」

どうやら最初からそう決まっていたようだ。

(本当、この世は世知辛い)
「彼だって実力で二番を勝ち取ったのよ」

開き直った教頭だが、次の瞬間ハッと口元を手で覆い真っ青になった。