(とカッコよく立ち去ったものの、これから何をすればいいのだろう?)

しだいにノロノロと重くなる足が向かった先は、葵宇宙がいる病室だった。

(そういえば、愛水ちゃんと初めて会った時……どうして私が視えたのだろう?)

彼女は霊感が強かった? それとも、死期が近付いた人間には霊が視えるとか? もしそうなら、私に気付かないあの子はまだ大丈夫だということだ。そう思った途端、私は自分の病室の前にいた。

「ツキミちゃん、調子が良さそうね」
「そうですね。手術をするなら今がチャンスなのに……」

ガラス窓から中を覗いている二人は白衣姿だった――ということは医者だ。
年配の女医が若い医師を諭す。

「不謹慎よ。それじゃあ、手術がしたいから『早く透子ちゃんの延命維持装置を外せ』と言っているようなものじゃない。透子ちゃんの親御さんの気持ちも考えてあげなさい」

これで確信を得た。私の心臓はあの子に移植されるのだ。だったら尚更早く延命維持装置を外してもらわなければ。
若い医師は、一応謝罪の言葉を述べるが不服そうだった。

「経験を積んで実績を上げたいのは分かるけど、ツキミちゃんの手術を行うのは私。貴方は助手。勘違いしないでね。勝手なことをしたら、この病院にいられないわよ」

淡々とした物言いだったが、若い医師の顔が真っ青になる。