「お前ともっと話せばよかった。家族だから話さなくても分かり合えるなんて傲りもいいところだ」

〝家族〟だからだ。正直な気持ちを言葉にするのが恥ずかしかった。

「お前の本心をもっと聞けばよかった。私の本心をもっと話せばよかった……」

確かに。父の思いが今ごろ分かるなんて……。
震える父の腕に寄り添い、温もりをもっと味わっておくんだったと思う。
叶わぬ夢だが……もう一度、父と母と姉とで家族をやり直したい……。

「透子、父さんもお前とずっと家族でいたい……」

微妙にズレる父とのトンチンカンなやり取りが、悲しいのに笑える。

(そうだ、泣き顔で旅立ちたくない。どうせなら、愛水ちゃんのように、微笑みを浮かべ逝きたい)

ふと魔法使いという言葉が脳裏を過ぎる。
そうだ、葵宇宙の代わりに私が魔法使いになろう!

「お父さん、よく聞いてね。私はどんな形であれきっと戻ってくる。だから……待ってて」

父の腕にソッと触れ、立ち上がる。
もう、後悔はしたくない。この地にいつまで止まれるか分からないが、残された時間を精一杯生きる!