お見舞いの花だろうか、美しい花々が部屋いっぱいに飾られていた。でも……どんな豪華な花も姉の美しさには負ける。

「お姉ちゃん」

枕元に立ち、声を掛けると「うーん、透子」と返事のような声が返ってきた。
そう言えば……昔読んだ本に、『霊が生者と会話をしたかったら、ウツラウツラと眠っている時に声を掛けるといい』と書いてあった。

「お姉ちゃん、今までごめんね。私、お姉ちゃんのことが羨ましくて、大嫌いだった」
「透子……私こそ……ごめんね。いつもいつも私よりも先に両親に気遣われる貴女が憎らしかった」

夢うつつに姉が涙を零す。

(両親が姉よりも私を気遣う? どういうこと?)

胸がサワサワ騒めき始める。

(私は何か思い違いをしていたのだろうか……?)
「お姉ちゃん、本当はお姉ちゃんが自慢だったんだよ」

姉の苦しげな顔が柔らかくなっていく。

「お嫁に行っちゃった時は淋しかった。本当はね……」

涙で姉の姿が霞む。

「お姉ちゃんが大好きだった」
「透子……私も……貴女が大好き」

姉の瞳からも涙が溢れ出す。

「だからお姉ちゃん――もう延命は止めて。お父さんとお母さんを説得して」

思わず口を突いて出た言葉だった。おそらく、これが私の真意だと思う。