そうだった。高校に合格した日、偶然、臓器移植のネットワークを見つけたんだ。お祝いに人助けでも、と軽い気持ちで登録した。

「でも、それがご家族の気持ちを逆なでしちゃったんでしょう?」
「もう。大変だったんだから」

どうやら看護師の一人はその場に居合わせたようだ。

「母親は『娘の体にちょっとでも傷を付けたら訴える』ってわめき散らすし、父親は『娘はどんなことをしてでも目覚めさせる』と言ってアメリカへの渡航手続きを始めちゃうし、お姉さん? 彼女が一番冷静だと思っていたんだけど……」
「ああ、一時も離れたくないってここに居座っていた綺麗な女性ね。挙げ句、倒れちゃったのよね。特別室だっけ、入院しているんでしょう?」

看護師たちの話は本当のことだろうか……あの両親と姉が……?
信じられない思いでいっぱいだったが、姉のことが心配になり、私はその場を離れる――が、私の存在に気付いていないのか、看護師たちは全く頓着せず会話を続けていた。
彼女たちの反応に、私は生き霊と言われる状態なのだなと改めて悟る。

(だったら、遠慮なくどこにでも行ける。姉はどこにいるのだろう……?)

そう思った途端――私は姉の病室にいた。