そう思うのに……どうしてだろう、気持ちが晴れない。
まさか、まだ何かあるのだろうか?
葵親子の後ろ姿を見つめていた私は慌てて二人を追う。その目に雑誌が映る。

(初恋ねぇ)

そもそも、恋とは想う相手があってこそできるもの。

(想う?)

キーンと頭の奥に痛みが走る。
何だろう……? 今、何か思い出しかけたけど……。
グリグリとこめかみを摩り、また葵宇宙の背中に視線を戻す。

(彼の初恋の相手ってどんな人だったんだろう?)

私と同じでまだということはないだろう、と思った途端、胸がギュッと締め付けられるような気がした。
温かさと切なさ。溢れ出た想いが胸に渦巻く。

(どうしてだろう?)

悲しくもないのに……泣きたくなる。

(これって……)

クラスメートの恋バナを思い出す。

『私、山下のことが好きなの、彼のことを思うと胸が痛くなるの』
『分かる! 恋する気持ちはピンク色だけじゃないのよね』
『そうそう、ダークな色も含めて恋なのよねぇ』

(これが皆の言っていた恋だ。私、葵宇宙が好きなんだ)