「僕さえいなかったら……」

ようやく分かった。彼が魔法使いになって飛ぼうとした理由が……。

「宇宙、成長したな」

父親の長い腕が葵宇宙の肩を抱く。

「苦しめていたんだな。すまなかった。いつまでもお前を子供扱いして、何も話さなかった父さんが悪かった」

父親は葵宇宙の頭に自分の頭をコツンとくっ付ける。

「確かに香苗と結婚した時、父さんの心にはまだ母さんがいた。香苗はそれでもいいから結婚しましょうと言ったんだ」

はい? じゃあ、逆プロポーズ?
葵宇宙も驚いたようだ。

「母さんを亡くして三年経っても、お前も私も立ち直れず悲惨な状態だった。見兼ねた……と言うよりも、葵家の財産狙いで、親戚どもが見合い話を次々持ってきたんだ」

「あれこそ本当に参った」と父親はウンザリした顔をする。

「私を落とせないと悟ると今度はお前をターゲットにした。そりゃもう、必死だったらしい」

らしい? なぜ言い切らないのだろうと思っていると、親戚と女性たちは父親の目を盗み、コッソリ仕掛けてきたからだそうだ。なるほど。

「で、お前は精神的なストレスから、とうとう自家中毒となり入院してしまった。当時、四歳だ」

そこで初めて、父親は親戚たちの悪企みに気付いたらしい。