「愛情と愛かぁ、ニュアンスは分かるけど……」
「分からないわよ。貴方、本気の恋なんてしたことないでしょう?」

形成逆転、今度は彼女が二ッと意地悪く笑った。

「だから、馬鹿なことを考えていないで恋でもしなさい。キラッキラの十代なんて、あっという間に終わっちゃうわよ」
「……本気の恋。なら尚更だ。ツキミの病気を早く治してやりたい。恋も知らずに死ぬなんて許さない」
「宇宙……貴方って、本当に頑固ね」

そう言いながらも彼女の瞳には涙が浮かんでいた。


***


あの人の登場で、かなり葵宇宙のことが分かった。
一番の収穫は、彼が愛人の子じゃなかったということだ。良かった。

でも……どうしてあそこまでツキミちゃんのことを気にかけるのだろう? それに、彼は『疫病神』という言葉を否定もせず受容している……そこには理由があるはずだ。

一つ謎が解けると、また次の謎が浮かぶ。
悶々とする頭にふと美雪さんの言葉が過ぎる。

(恋かぁ……)

彼女が言ったように、キラッキラの十代なんてすぐ終わってしまう。なのにどうしてだろう、私は謎ばかり追い掛けている。そんな自分が笑える。

(そう思いながらも……)

私は葵宇宙を追うのが止められない。どうやら、今日は病院に寄るらしい。でも……いつもより雰囲気が暗い。

(どうしたのだろう?)

彼は正面玄関に向かわず中庭の方に歩いて行く。