「そう言うけど……父さんの心にいるのは、あそこにいる」と葵宇宙は天を指し、「母さんだけだよ」と渋い顔をする。
「だから。余計に義母さんに遠慮しているのかなぁ、後ろめたさで」
「そんなの知らない。確かに義兄さんは姉さんにベタ惚れだったけど……」
「いっそ叔母さんが父さんと結婚したらよかったのに」
葵宇宙がポツリと呟いた。
「なっ、何を馬鹿なこと言っているの!」
美雪さんがギッと葵宇宙をひと睨みする。
「でも、美雪叔母さん、好きだったんだろ?」
そんな睨みなど全く関知せず、みたいに彼は話を続ける。
「どうして迫らなかったんだよ。僕としては叔母さんが母親なっても、全然、問題なかったんだけどな」
カツを口に入れて口をモゴモゴさせる葵宇宙を見つめながら、彼女がハーッと深い溜息を漏らした。
「何でもお見通しってわけ?」
返事の代わりに葵宇宙がニヤリと笑う。そんな彼に彼女は小さく舌打ちした。
「確かに好きだったわ。でも、今思うと姉の旦那様としての義兄さんが好きだったの。ああいう夫婦に憧れていたのかもね」
「愛情は持てても、愛は抱けなかった」と彼女はキッパリ言い切った。
「だから。余計に義母さんに遠慮しているのかなぁ、後ろめたさで」
「そんなの知らない。確かに義兄さんは姉さんにベタ惚れだったけど……」
「いっそ叔母さんが父さんと結婚したらよかったのに」
葵宇宙がポツリと呟いた。
「なっ、何を馬鹿なこと言っているの!」
美雪さんがギッと葵宇宙をひと睨みする。
「でも、美雪叔母さん、好きだったんだろ?」
そんな睨みなど全く関知せず、みたいに彼は話を続ける。
「どうして迫らなかったんだよ。僕としては叔母さんが母親なっても、全然、問題なかったんだけどな」
カツを口に入れて口をモゴモゴさせる葵宇宙を見つめながら、彼女がハーッと深い溜息を漏らした。
「何でもお見通しってわけ?」
返事の代わりに葵宇宙がニヤリと笑う。そんな彼に彼女は小さく舌打ちした。
「確かに好きだったわ。でも、今思うと姉の旦那様としての義兄さんが好きだったの。ああいう夫婦に憧れていたのかもね」
「愛情は持てても、愛は抱けなかった」と彼女はキッパリ言い切った。