「全くあの占いババア! あんなの信じちゃダメ! 義兄さんの姉だか知らないけど……ったく!」
「でも、よく当たると評判でテレビにも出ている人だよ。非科学的かもしれないけど、僕は一生忘れない。『お前は葵家の疫病神だ。お前が葵家の全てを奪い尽くしている』と言われたこと」
「本当、あの守銭奴、許さないんだから!」

怒りに任せて彼女がバンとテーブルを叩く。

「宇宙、よくお聞きなさい。何度でも言うわ。あいつは葵家の財産目当てであんなことを言ったの! 義兄さんの後を継ぐのは宇宙! あいつの息子なんて会社でもデクの棒って言われているほど仕事ができないんだから」

なるほど、次期社長候補争いに、まだ高校生だというのに巻き込まれているということか……気の毒に。

「あの女は宇宙を貶めるためだったら何でもやる女よ。幼かった貴方の心を壊してもね」

トラウマ? 全ての元凶はそれ?

「それでも……」と葵宇宙は言葉を切り、一つ息を吸い込むと一気に言った。

「僕は疫病神と言われても仕方がないほど元気に生きてる。それに、家族の誰よりも幸福だ」
「ちょっと待って!」

彼女が言葉を続けようとした時、「お待たせいたしました」と料理が運ばれてきた。