「だったら夕飯一人なんでしょう? ちょっと早いけど一緒に食べて」
「奢ってくれるんだよね?」
「当たり前じゃない。どーんと任せなさい!」

「ラッキー」と葵宇宙はメニューを真剣に見始めた。
彼はカツカレーのセット、彼女は和風スパゲティのセットを注文する。御曹司と聞いたが、意外に平凡なオーダーでフッと口元が綻ぶ。

「で、ツキミちゃんの容体は?」
「ドナーが見つかったみたい」
「まぁ、良かったわね」

心からホッとした様子だ。

「でも、見つかっただけ……ツキミが元気にならないと安心できない」

葵宇宙の呟きにも似た声に、彼女の瞳が哀しげに蔭る。

「まだ自分のことを疫病神、なんて思っているんじゃないでしょうね?」
(えっ、疫病神……?)
「思っているよ。ずっと思ってる!」
「姉さんが亡くなったのも、ツキミちゃんが病気なのも……」
「僕だ! 僕が生まれてきたせいだ!」

絞り出すような声。

「あんな言葉、気にしちゃダメって何度言ったら分かるの!」

抑えた声だが、本気で怒る彼女の瞳が涙で潤んでいる。

「気にするな? 無理だ! 母は僕を庇って車に撥ねられ死んだ。ツキミは心臓が弱く入退院を繰り返している……」

どうしてそれが全部葵宇宙のせいなのだろう?