(それにしても〝愛人の子〟というのは本当だろうか? あんなに仲が良さそうな家族なのに……)

葵宇宙に目を移す。

いったい何を見ているのだろう? 彼の視線を辿ると……病院? 校庭のずっと向こう、建物と建物の間に甲賀総合病院がチラッと見える。
ああ、妹さんかぁ、と思ったところで始業のチャイムが鳴った。
授業が始まっても、葵宇宙のことで頭がいっぱいだった。
魔法使い、病気の妹、愛人の子……授業に身が入らない。

(どうしてこんなに気になるのだろう?)

金網の向こう側に彼を見た瞬間、私の心は葵宇宙に強く囚われた。

(そこにどんな意味があるのだろう?)

自分で自分が分からない。ただ、彼の行動全てが能動的で……惹き付けられる。
私の行動はゲスの極みだ。最低な奴だと思う。でも、葵宇宙の全てを知ったら、私は生まれ変われるんじゃないかと思う。大袈裟かもしれないが……そう思うのだ。

(どうにかして、彼の生い立ちを知ることができないだろうか?)