読書に集中していると、ボソボソと女子の声が聞こえてきた。
珍しいこともあるものだ。いつもは周りの声など気にならないのに……。

「葵君てさぁ」

どうやらレーダーが葵宇宙情報をキャッチしたらしい。

「葵君がどうしたの?」
「それがさぁ、彼ってお父さんの愛人の子らしいの」
「えーっ、嘘ぉ!」

ということは、あのお母さんとは血が繋がっていないということ?
視線を文字に置いたまま、さらに耳を澄ます。

「それ、確かな情報なの?」
「十中八九。父が彼のお父さんの会社に勤めているの」
「えーっ! 彼、社長の息子? 御曹司?」

二人の熱い視線が葵宇宙に向き、ハーッと口からピンクの溜息が漏れる。

「例え愛人の子でも……彼女になりたーい!」
「でもさぁ、ここまで異世界の人だと、彼女とかっておこがましいと思わない?」
「確かに。観賞用としては最高だけど……彼氏……無理だわ」

二人は同時に頷き、「彼のハートを射止める人ってどんな女神だろうね」と、もう一度大きな溜息を吐いた。

会話を聞き終え、私も心の中で暗い息を吐く。
彼は『なれるなら神でもいい』と言ったが――既に天上の人だ。