四月八日。今日、私、霧乃透子は超難関校である東之大付属高校の一年生になった。

(それにしても本当に凄い!)

今年は例年になく冬将軍が居座り続けた。ニュースでも『桜の開花は遅くなります』と言っていたが、四月に入った途端、あっという間に春めいた陽気になり、遅れを取り戻すかのように花開き始めた。

ここ東之大付属高校の校庭周りにも、七百本のソメイヨシノが植えられている。知る人ぞ知る桜の名所である。淡いピンクに彩られたこの風景は、絶景と言うほかない。

『入学式に毎年たくさんの人が招待されるの。でも参加者の本命は花見。それはもう賑やかよ』

姉の言葉どおり、花に群がるミツバチのような、見るからに浮かれた人々が大勢押し寄せていた。

(でも、入学式に屋台や土産物売り場って……? 笑える)

その理由は軽快な音楽に乗って聞こえてきたアナウンスで分かった。

〈新入生諸君! 当校名物『桜の集い』を先輩やOBの皆様方と共に大いに楽しんでもらいたい。なお、先輩及びOBの皆様方におかれましては、屋台の品々を遠慮無くお買い求め頂きたい! ご承知のとおり、売上金は我が校の奨学金に充てられます。どうぞよろしくお願いします〉

噂どおりユニークな高校だ。