元々美しい顔に〝怒〟がアクセントとなり、その顔は恐ろしく怖かった。

「だって、俺、医者だぜ」

彼の迫力に怯みもせず、柊木先生がのほほんと答える。
意味不明だ。葵宇宙も同様のことを思ったのだろう。「医者がどうした?」と怒鳴るように訊く。

「俺ねっ、夜間と休日、甲賀総合病院で救急の手伝いしてるんだ」
「僕は救急病棟なんて行った覚えはない」
「確かに来ていない。でも……」

柊木先生がニヤリと笑う。

「君って無自覚だけど、目立ち過ぎるんだよね」

ああ、それは分かる。

「君が病院に現れると、すぐ噂になるんだ『妖精王子が来た』ってね」
「はぁ? 僕は既に妖精だったのか?」
「期待を裏切らない反応だ」

ゲラゲラ笑う柊木先生を葵宇宙は冷ややかに見つめる。

「で、噂で妹のことを聞いたということですか?」
「そう。確か心臓だったね、妹さんの悪い所」

噂って怖い! プライバシーも秘密保持ナンチャラも有ったもんじゃない。

「医者なら隠しようがないか……ええ、移植しか手がないみたいです」
「あと何年?」
「……手術をしないと、中学生にはなれないみたいです」

嘘っ、あんなに可愛い子が……。

「ということは、妹を助けるために魔法使いになりたいってことか?」
「くそっ、そうだよ、悪いか!」

(そうだったんだ……)