「僕は別に魔法使いにこだわっているわけじゃありません。妖精でもサンタクロースでも、願いが叶うなら神にだってなります」
「めちゃくちゃアバウトだな」
「その中で魔法使いが一番なりやすいと思っただけです」
「いや、それならサンタクロースが一番じゃないか?」
「彼は一年で一回しか願いを聞き届けません!」

回数の問題か? いやいや論点が完璧にズレている!

「それで、君は何を叶えたいんだい?」
「それは秘密です。だって、願いを口にしたら叶わないじゃないですか」
「いや、不言実行より有言実行の方が自発的で男らしいぞ」

これで本当に医者かと疑いたくなるが、彼は医師免許を持つ、正真正銘の医者だ。
噂では、東之大高校の理事長が柊木先生のお祖父様で、理事長たっての願いで校医になったらしい。ゆくゆくは柊木先生がこの学校の理事長になるみたいだ。だが、本人は医療の現場に戻りたいと事あるごとに言っているようだ。

「そうそう、君の妹って入院しているんだよね?」
「なっ、何で知っているんだ?」

ガバッと葵宇宙が起き上がった。