「ねぇ、もしかしたら、そのパジャマも手作り?」
「うん! お姉ちゃんすごい! よく分かったね」

だって帽子と同柄の生地にウサギのアップリケ。どう見たってお揃いだ。

「おばあちゃまはお洋服を作る人だったの」

彼女が「あのね」と続きを話そうとしたとき、「あら、愛水ちゃん」と驚きの声が聞こえた。朝田看護師だ。

「こんなところで何をしているの? おねんねしていなきゃダメじゃない」
「だって、おばあちゃまが、まだ来ないんだもん」

朝田看護師の顔が曇る。
『さっきお帰りになったばかりなのに……』と呟く声が聞こえた。

「それでもね、ダメだよ。ほら、お手々がこんなに冷たくなってる」

朝田看護師は腰を屈め、彼女の手を取ると優しく手の甲を擦り始めた。

「お風邪を引いたらお祖母様が悲しむわよ。だから、お部屋で待っていようね」
「おばあちゃまが泣くの?」

途端に少女の口がへの字に歪む。

「やだ、それダメ! お部屋に戻る」
「いい子ね」

グスグス鼻を鳴らす彼女を朝田看護師が抱っこする。
二人の背中を見送っていると……あれっ? さっき出てきた部屋に入っていった。

(あの子と同室なんだ)

じゃあ、今度来る時は愛水ちゃんのお見舞いも兼ねよう。そう心に決め、私はその場を後にした。