彼の後ろ姿を見つめながら、そう言えば……と思い出す。
私も小学校に上がるまで再々熱を出し、病院のお世話になっていた。

(本当に丈夫になったものだ)

感慨深く思っていると、「お姉ちゃん、何しているの?」と可愛い声が聞こえた。
視線を下げるとウサギの帽子を被った大きな目の少女が私を見上げていた。
パジャマ姿――ということは、この子も入院患者だろう。

「あっ、ごめんね。私、邪魔をしていた?」
「ううん。ボンヤリしてたから気になっただけ」

小学生? 小さいから低学年だろうか?

「そのお帽子、可愛いね」
「うん、おばあちゃまが作ってくれたの」
「へー、手作り? 凄いねぇ!」

私もこの子みたいだった。入院中は誰かれとなく声を掛け、話し相手になってもらっていた。寂しかったんだ……きっと。
その頃を思い出し、葵宇宙を追うことを止めて彼女と少し話すことにした。

「あたし、藍田愛水」
「綺麗な名前だね」
「おばあちゃまが付けてくれたの」

彼女の嬉しそうな顔にこっちまで顔が綻ぶ。

「愛水ちゃんは、おばあちゃまが大好きなんだ」
「うん! 大好き」