「そうなったら、妹夫婦に面倒を見てもらうから大丈夫」
「拒否!」
「何だとぉ」
言い合いが始まりそうになったが、「本当、いつも仲がいいわね」と第三者の声が入った。
「あっ、朝田さん」
声の主は朝田という年配の看護師さんだった。
「ツキミちゃん、お熱を計りましょうね」
「あのね、兄に太っとい注射してやって下さい」
「これツキミ」と母親がたしなめると、「だって」と拗ねた声に被せてピピピピッと電子音が鳴る。
「あらあら、注射が必要なのはツキミちゃんの方ね」
朝田看護師が体温計を見ながら困った顔をする。
途端に母親と葵宇宙の表情が曇る。
「先生にすぐ診てもらいましょうね」
「僕は帰るよ。今度は例の雑誌を持って来る。楽しみに待ってろ」
「お兄ちゃん」と妹が情けない声を出す。
「ゆっくり休め。手術をして退院するんだろ」
「うん、お兄ちゃん、気を付けて帰ってね」
「ああ」と葵宇宙は片手を上げ、「じゃーな」と微笑むと病室を出ていった。
「拒否!」
「何だとぉ」
言い合いが始まりそうになったが、「本当、いつも仲がいいわね」と第三者の声が入った。
「あっ、朝田さん」
声の主は朝田という年配の看護師さんだった。
「ツキミちゃん、お熱を計りましょうね」
「あのね、兄に太っとい注射してやって下さい」
「これツキミ」と母親がたしなめると、「だって」と拗ねた声に被せてピピピピッと電子音が鳴る。
「あらあら、注射が必要なのはツキミちゃんの方ね」
朝田看護師が体温計を見ながら困った顔をする。
途端に母親と葵宇宙の表情が曇る。
「先生にすぐ診てもらいましょうね」
「僕は帰るよ。今度は例の雑誌を持って来る。楽しみに待ってろ」
「お兄ちゃん」と妹が情けない声を出す。
「ゆっくり休め。手術をして退院するんだろ」
「うん、お兄ちゃん、気を付けて帰ってね」
「ああ」と葵宇宙は片手を上げ、「じゃーな」と微笑むと病室を出ていった。