〈世の中は愛に溢れています〉

テレビの中でコメンテーターが、何を基準に誰に話しているのか偉そうなことを言っている。
バカみたいだ。愛なんてまやかしなのに……。

〈平和は人と人とが繋り、互いの愛で護持されます〉

平和?
辞書には『戦いや争いがなく穏やか状態のこと』と書いてあった。だったら、私はそこから一番遠いところの住人だ。

なぜなら私の世界は混乱真っ只中。嘘に塗れた虚栄の世界だからだ。
しかし、そこに住んでいるのは私だけではない。利己的な外弁慶の父も、理想郷に生きる母も、そして、神の祝福を一身に集めている姉も――ああ、仲良しこよしが大好きな学校の皆もだ。

本当に虫酸が走る。

でも、誰よりも私が嫌悪するのは、そんな風に思っているのにそれを口に出せず、皆の言いなりになっている自分自身だ。
親の期待にも、教師の期待にも応えられないくせに、優等生のフリをして真面目ぶる自分が……大嫌いだ!