………………
今までずっとつかんでいたジジィの首根っこをぽいと離し、噛んて含めるようにジジィに宣言した。
「……だから、俺はぜっっったい、盗みをしない。
下着泥棒なんぞは論外だ……判ったか?」
俺の宣言に、ジジィはひょい、と片眉をあげた。
「……例えば、その『盗み』が、この国の民を救うコトになったとしても、かのぅ?」
「ああ?」
突然思いもかけねぇコトを言われて、反射的に眉が寄った。
「ん、だよ、そりゃ?」
「おぬしが、聞きたくば、話せばなるまい。実は……」
「いや、俺は別に聞きたくねぇし」
そんな、下着が絡むような下品な話は、まっぴらごめんだ。
後は、勝手にやってくれ、と。宿屋の新しい部屋に移ろうとした俺に、ジジィが、ぴょ~~んと、飛びかかって来やがった。
その、ジジィの軽いカラダが、俺の胴体全部を覆うように張り付いて、俺は、思わず叫び声をあげた。
「きゃ~~うわ~~!」
「頼む~~話ぐらい、聞いてくれ~~!!」
「ィヤ~~!!!」
ばきっ!
俺の放った強力な拳の一打は、正確にジジィの顎をとらえ、俺に無茶な依頼を持ってきたエロジジィは、めでたく夜空の星となった。
きらりんっ☆
……【完】
「~~たのむ~~始まる前に終わらんでくれ~~」
今、殴られて星になったハズのジジィは、超ソッコーで帰って来たかと思うと、今度は泣きつきやがった。
ちっ、丈夫なヤツ!
その様子に、思わず舌打ちする。
「……で? 話したいことがあるなら、さっさと話せ」
クソジジィのカラダを張った訴えに、とうとう折れた俺が、額に浮かんだ青筋を隠さずに聞くと、ヤツは、自分の手をもみもみしながら話し始めた。
「この国は、民を統べる王が、強力な魔法を使って『森』からも国を守っておるのじゃが……」
「ああ」
ジジィに言われて、来た時のコトを思い出した。
……この国は、魔法の触媒に使う、レアメタルを産出する鉱山を中心に、かなり大きな街が発展しているというのに、森から身を守る、高い塀なんてちっとも見当たらなかった。
小さくはない街に、森がはびこって来ないなら。妖魔が入って来ないと言うのなら、相当に強力な魔法の力がかかっているに違いなかった。
しかも、人間同士、国同士の決めごとや、公務の合間をぬって、なお。
木や石の壁を作らずに『森』から国を守るとは、相当魔法の才に秀でた王に違いない。
まさに、魔王、だ。
「その、王が……実は人間では、ないのだ」
「は?」
言いにくそうなジジィの話に、俺は首を傾げた。
「人間ではない? じゃあ、一体『ナニ』をこの国の人間は『王』に祭り上げてるって言うんだ」
「……ホムンクルス、と言うモノじゃ。
王自身もまた、二十年ほど前に、この地にやって来た偉大な魔法使いによって生み出された、ヒトによく似た……いいや。
ある意味、ヒトを超えた力をもつ、生き物なのじゃ……!」
「……なんだって?」
だから、ヒトにはとてもできないほどの能力を持ち、感情に流されず、甘言にも乗らず。時計のように正確な、理想的な統治ができたのだそうだ。
そんな理想的な『王』と国を直接守る『魔法使い』を兼任するヤツの話に、俺は納得して頷いた。
「へえ……そんな奴がいるのなら。他の国でも、同じヤツを作ってそいつを魔王にすれば、世の中すっげ、平和になりそうだな」
森に沈み、人を食う妖魔に襲われても、なお。
争いやら、もめごとで、国同士ごたごたしているコトを考えると、そんなヒトにあらざる魔王は、もしかすると救世主かもしれない。
俺が思わず感心してうなづくと「ところが、そう。上手く、行かなくての」と、ジジィは渋い顔をして言った。
元は淡々と国を統治をし、国を守っているだけの人形のような王だったのに、年を経るごとに妙に人間くさくなり、贅沢な食事や酒。衣装を要求してきたそうだ。
最初のうちは、功労者の言うコトなので、目をつぶっていた。
けれども、それが国の財政を危うくさせるほど高額で、挙げ句の果てに生贄を要求するに至り、とうとう魔王を作りなおし、新しいモノと交代させるコトになったらしい。
ジジィは深々とため息をついた。
「それを察した魔王自身が、自分の複製を作られるコトを嫌って、設計図と身体を作る材料の複製の元、全てを焼いてしまったのじゃ」
「へえ」
「ところが、先日。魔王を作り、一度はこの地を去った魔法使いが、現れての。
予備の複製の元を、魔王も知らない場所に隠した、と言ったのじゃ」
「……まさか、その場所が」
「左様。魔王のパンツの中だと言うのだ。
場所から考えて、薄い布に書かれた設計図だろう。
だからおぬしに、パンツを盗んで来て欲しいのじゃ」
長い話を終えて、ジジィはドヤ顔で、びしっと指を突きつけてきやがったが、俺は知らん。
「話は、判った。だが、昨今の盗賊(シーフ)は盗みをしねぇんだって」
「国家の行く末を左右するパンツじゃ。
くれぐれも、大事に盗んで来るのじゃ~~」
「だから、ヒトの話を聞けッつぅの!」
…………アタマ痛てぇぜ、くそったれ!
今までずっとつかんでいたジジィの首根っこをぽいと離し、噛んて含めるようにジジィに宣言した。
「……だから、俺はぜっっったい、盗みをしない。
下着泥棒なんぞは論外だ……判ったか?」
俺の宣言に、ジジィはひょい、と片眉をあげた。
「……例えば、その『盗み』が、この国の民を救うコトになったとしても、かのぅ?」
「ああ?」
突然思いもかけねぇコトを言われて、反射的に眉が寄った。
「ん、だよ、そりゃ?」
「おぬしが、聞きたくば、話せばなるまい。実は……」
「いや、俺は別に聞きたくねぇし」
そんな、下着が絡むような下品な話は、まっぴらごめんだ。
後は、勝手にやってくれ、と。宿屋の新しい部屋に移ろうとした俺に、ジジィが、ぴょ~~んと、飛びかかって来やがった。
その、ジジィの軽いカラダが、俺の胴体全部を覆うように張り付いて、俺は、思わず叫び声をあげた。
「きゃ~~うわ~~!」
「頼む~~話ぐらい、聞いてくれ~~!!」
「ィヤ~~!!!」
ばきっ!
俺の放った強力な拳の一打は、正確にジジィの顎をとらえ、俺に無茶な依頼を持ってきたエロジジィは、めでたく夜空の星となった。
きらりんっ☆
……【完】
「~~たのむ~~始まる前に終わらんでくれ~~」
今、殴られて星になったハズのジジィは、超ソッコーで帰って来たかと思うと、今度は泣きつきやがった。
ちっ、丈夫なヤツ!
その様子に、思わず舌打ちする。
「……で? 話したいことがあるなら、さっさと話せ」
クソジジィのカラダを張った訴えに、とうとう折れた俺が、額に浮かんだ青筋を隠さずに聞くと、ヤツは、自分の手をもみもみしながら話し始めた。
「この国は、民を統べる王が、強力な魔法を使って『森』からも国を守っておるのじゃが……」
「ああ」
ジジィに言われて、来た時のコトを思い出した。
……この国は、魔法の触媒に使う、レアメタルを産出する鉱山を中心に、かなり大きな街が発展しているというのに、森から身を守る、高い塀なんてちっとも見当たらなかった。
小さくはない街に、森がはびこって来ないなら。妖魔が入って来ないと言うのなら、相当に強力な魔法の力がかかっているに違いなかった。
しかも、人間同士、国同士の決めごとや、公務の合間をぬって、なお。
木や石の壁を作らずに『森』から国を守るとは、相当魔法の才に秀でた王に違いない。
まさに、魔王、だ。
「その、王が……実は人間では、ないのだ」
「は?」
言いにくそうなジジィの話に、俺は首を傾げた。
「人間ではない? じゃあ、一体『ナニ』をこの国の人間は『王』に祭り上げてるって言うんだ」
「……ホムンクルス、と言うモノじゃ。
王自身もまた、二十年ほど前に、この地にやって来た偉大な魔法使いによって生み出された、ヒトによく似た……いいや。
ある意味、ヒトを超えた力をもつ、生き物なのじゃ……!」
「……なんだって?」
だから、ヒトにはとてもできないほどの能力を持ち、感情に流されず、甘言にも乗らず。時計のように正確な、理想的な統治ができたのだそうだ。
そんな理想的な『王』と国を直接守る『魔法使い』を兼任するヤツの話に、俺は納得して頷いた。
「へえ……そんな奴がいるのなら。他の国でも、同じヤツを作ってそいつを魔王にすれば、世の中すっげ、平和になりそうだな」
森に沈み、人を食う妖魔に襲われても、なお。
争いやら、もめごとで、国同士ごたごたしているコトを考えると、そんなヒトにあらざる魔王は、もしかすると救世主かもしれない。
俺が思わず感心してうなづくと「ところが、そう。上手く、行かなくての」と、ジジィは渋い顔をして言った。
元は淡々と国を統治をし、国を守っているだけの人形のような王だったのに、年を経るごとに妙に人間くさくなり、贅沢な食事や酒。衣装を要求してきたそうだ。
最初のうちは、功労者の言うコトなので、目をつぶっていた。
けれども、それが国の財政を危うくさせるほど高額で、挙げ句の果てに生贄を要求するに至り、とうとう魔王を作りなおし、新しいモノと交代させるコトになったらしい。
ジジィは深々とため息をついた。
「それを察した魔王自身が、自分の複製を作られるコトを嫌って、設計図と身体を作る材料の複製の元、全てを焼いてしまったのじゃ」
「へえ」
「ところが、先日。魔王を作り、一度はこの地を去った魔法使いが、現れての。
予備の複製の元を、魔王も知らない場所に隠した、と言ったのじゃ」
「……まさか、その場所が」
「左様。魔王のパンツの中だと言うのだ。
場所から考えて、薄い布に書かれた設計図だろう。
だからおぬしに、パンツを盗んで来て欲しいのじゃ」
長い話を終えて、ジジィはドヤ顔で、びしっと指を突きつけてきやがったが、俺は知らん。
「話は、判った。だが、昨今の盗賊(シーフ)は盗みをしねぇんだって」
「国家の行く末を左右するパンツじゃ。
くれぐれも、大事に盗んで来るのじゃ~~」
「だから、ヒトの話を聞けッつぅの!」
…………アタマ痛てぇぜ、くそったれ!